本研究の目的は、ある事象が具体的な土地や環境と紐づけられる形で文脈と展開をもって語られる性質を「地域空間の物語性」と表現し、その防災上の意義を提示することである。この目的に対して本研究では、日本の伝統的社会において、災害リスクの低減に向けては「避ける」「祈る」「語る」という3つの姿勢が重要であったことを示した。そのうえで、現代における地域防災活動の社会実験を展開し、「地域空間の物語性」の視点を導入することで、人びとは自身が生きる時間と場所のみならず、過去や他の土地において生じた膨大な事象のなかからある部分を選択し、解釈し、自身の関心領域と関連付ける形で記憶にとどめることができることを示した。
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