本研究の目的は,地震による火山砕屑物の崩壊メカニズムを明らかにし,それに基づいた土砂災害ハザードマップ作成法を提示することである.まず,火山灰質粘性土の動的応答特性に着目し,物理的・力学的性質を室内試験で明らかにする.さらに,地震時の火山砕屑物の崩壊について,常時微動による振動特性から推定される地形・地質構造を考慮した数値解析を行うための適切なパラメータ設定手法を構築する. 23年度は,前年度の懸案事項であった現地調査を行った.福島県白河市西郷村の切土斜面において,土検棒による貫入試験とベーンコーンせん断試験,常時微動観測,原位置試料採取を実施した.室内試験は,物性試験と一軸圧縮試験,光学顕微鏡による観察を行った.土検棒によるサウンディング試験の結果,すべり面を形成すると推測される強風化粘性土の換算N値は,地表面から深度40cmの地点で4.5,粘着力c=-0.16,せん断抵抗角φ=13.9°と推定された.またコンシステンシー試験の結果,採取した火山灰質粘土は,MH(高液性のシルト)で,液性指数が0.89であった. また,本研究では,前年度に引き続き,地盤調査の中でも非破壊で容易に表層地盤の特徴が推測できる微動探査に着目し,深層学習を用いた画像解析手法で簡易に地盤構造を推定する手法の開発を行った.23年度は,大阪府と福島県の41地点のK-NET観測点で観測された8042個の50gal以下の地震動による地震動H/Vスペクトルを作成し,学習モデルを構築した.このモデルを用いK-NET観測点で観測した常時微動による微動H/Vスペクトルを分類した.その結果,N値の深度分布ならびに土質柱状図に比較的良好な相関がみられた.今後の展開として,土質柱状図が既知かつ火山灰質粘性土が堆積する地点で多数の微動観測を行い,得られた微動H/Vスペクトルから,観測地点と類似した地盤の特徴を持つ柱状図を機械学習により推測できるかどうか検証することなどが挙げられる.
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