研究実績の概要 |
本申請では, 希土類を含む準結晶・近似結晶, 関連物質に着目し, 超音波計測による物質の弾性率, 超音吸収係数測定を通して系のエネルギー散逸過程を評価し, 希土類を含む準結晶およびその類似クラスター構造をもつ近似結晶の電子状態, 低エネルギー励起状態に関する微視的物理量の決定を主目的とする。特にこれまで申請者の研究実績が豊富なYb系を主とし, 通常結晶と同様な振る舞いを示す量子臨界的挙動との比較から, 回転対称性のみ残存する系で電気四重極モーメントを主とする多重極モーメントがどの様な状態で残留するか?という基本的かつ本質的な点に主眼を置き,準結晶・近似結晶に特徴的な新規量子現象の発現機構解明に迫った。本年度は主に一般式RCd6(R:希土類)で記述される近似結晶について重点的に超音波計測を実施した。特にR=Gd、Tbについて、広い温度、磁場領域で弾性率、超音波吸収率を測定し、以下の結果を得た。 =GdCd6=超音波計測により広い温度・磁場領域において弾性率を測定した。構造相転移に伴う顕著な弾性軟化前駆現象、ならびに低温領域における磁気逐次転移に伴う弾性異常とその磁場依存性を明らかにした。これらの結果を基にGdCd6の温度磁場相図を決定した。 =TbCd6=超音波計測により広い温度・磁場領域において弾性率を測定した。構造相転移に伴う顕著な弾性軟化前駆現象、ならびに低温領域における磁気逐次転移に伴う弾性異常とその磁場依存性を明らかにした。これらの結果を基にTbCd6の温度磁場相図を決定した。更には、構造相転移温度以下で僅かな弾性軟化を逐次転移温度以上で観測し、Tbイオンの結晶場基底状態に起因したものである可能性を指摘した。
|