本研究計画では、合金組織制御を用いて自己組織的にキラル磁性体ナノ構造を形成し、ナノ構造中のスキルミオンの状態を走査透過型電子顕微鏡直接観察により明らかにすることを目的としている。最終年度は前年度から継続して、メカニカルアロイング法により微細結晶粒から成るB20型合金を合成し、電子顕微鏡観察用のための試料薄片化および微分位相コントラスト走査透過型電子顕微鏡による磁気構造観察を試みた。メカニカルアロイングにより作製した合金粉体の物性測定および電子顕微鏡観察用試料薄片化の効率化を図るために、放電プラズマ焼結によるメカニカルアロイング粉体のバルク化を検討した。B20型FeGeについて、種々の合成条件および焼結条件を探索した結果、高密度のバルク体の作製に成功した。さらに、少量のCrを添加した合金において、焼結性が向上することを明らかにした。これらのバルク試料に対し磁性測定を実施し、Cr添加による磁性への影響を明らかにした。得られたバルク試料の結晶子サイズはメカニカルアロイング粉体と比較して大きな差はなく、数十~数百nmの分布をもち、高圧合成で作製したB20合金とは異なる結晶組織をもつことが明らかとなった。また、メカニカルアロイング以外の合成プロセスによる物質探索・組織制御を検討した結果、正方晶ホイスラー合金Mn-Pt-Pd-Snにおいて磁性の組成依存性を明らかにした。期間全体を通して、様々なスキルミオン物質合成および物性研究への展開が期待される成果を得た。
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