本研究ではまず初年度に、スパッタリング法を用いたp-Si基板上へのn-Si単層膜堆積によるp/n接合の形成と、熱起電力の評価・解析を行った。当該試料の面内方向に温度勾配を与えることで、n-Si薄膜が成膜された領域では高温側が相対的に正の電位、低温側が相対的に負の電位となり、温度勾配を与えることで厚さ数μmの薄膜であっても、バルクのn-Siと同様のゼーベック効果を示すことが確認でき、p-Si/単層薄膜n-Si構造における温度勾配に対して垂直方向の熱-電力変換を確認した。 第2年度においては、多層化に向けての第一段階として2層p/n接合薄膜構造の上下に金属電極を薄膜形成した素子を試作し、発電特性を調査した。また、堆積パターンの異なるp-Si薄膜とn-Si薄膜により構成される薄膜垂直熱電発電試料を作製し、様々な温度条件下における発電特性と薄膜面内方向における電位分布を調査した。その結果、熱電発電特性は、p-Siとn-Si間の等電位点の位置により大きく左右されることが示唆された。また、ケルビンフォース顕微鏡を用いて、作製した2層p-Si/n-Si接合薄膜試料をへき開した断面の表面電位分布測定を試みた。 最終年度においては、薄膜熱電発電素子の作製において、p-Si/n-Si薄膜接合対を絶縁層を介してさらに積層した素子の試作を行い、その熱電発電特性を調査した。p-Si/n-Si薄膜接合対の積層化により熱起電力は加算された一方、短絡電流は保たれたことから、積層化による発電性能向上の有効性が確認された。また、半導体薄膜や金属電極の形状・位置による発電特性の違いについての知見を得た。
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