希土類永久磁石の需要拡大に伴い、その高性能化と新たな磁石材料探索が求められている。特に、磁石内部に存在する界面近傍の電子状態を計算科学的手法により明らかにすることは、学術的意義が高い研究である。最終年度は、これまでの研究の範囲を拡張するため、永久磁石界面構造の作成プログラムおよび自動化処理プログラムの作成・整備を進めた。特に、異種界面に対応していた界面構造作成プログラムを同種構造の界面にも拡張するようにすることで、同種界面磁性状態に関する第一原理計算を実施できるようになった。今後は、同種界面構造においても計算を実施することで磁石材料の性能に及ぼす影響を検証する。 また、ニューラルネットワークの技術を用いて構成されたモデルポテンシャルを活用し、磁石のバルク物質への計算精度を検証したところ、第一原理計算の計算結果をよく再現することが明らかになった。今後は界面構造にも適用し、精度検証を行うことで、時間の大幅短縮の可能性を探る。 (1) 日本磁気学会会誌「まぐね」の特集「軽元素を利用した磁性材料研究の新展開」において、「電子論で探るNd-Fe-B磁石主相における軽元素の役割」というタイトルのトピックス記事が掲載された。 (2) 国際学術誌Nature Communicationsに掲載された新奇磁性合金ナノ粒子に関する磁気異方性に関する研究の詳細な解析及びその他候補物質の探索を進めている。共同研究を進めている実験室においては、新たな磁性化合物合成の可能性が示唆されていることから、今後は第一原理計算を用いて構造安定性や磁気物性に関する理論解析を実施する。 (3) 2024年7月に開催予定のInternational Conference on Magnetism 2024および2024年8月に開催予定の電気学会産業応用部門大会シンポジウムにて研究成果に関する招待講演を行う。
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