研究課題
超イオン伝導体の高速イオン伝導は、古典的な単一イオンホッピングではなく、キャリアイオン同士の相関による協奏的な伝導によりもたらされるとされてきた。一方で、我々のリチウム超イオン伝導体Li10GeP2S12 (LGPS)の単結晶を用いた研究からは、イオン相関によってイオン伝導が阻害されることが見いだされた。これは、キャリアイオン同士の相関が必ずしもイオン伝導によい影響を与えるとは限らず、適切な大きさのイオン相関を持たせる必要があることを意味する。本研究では最適なイオン相関の制御方法を確立することを目的とし、イオン相関がイオン伝導に与える影響を化学組成や結晶構造の観点から調べた。本年度は超イオン伝導体Li1+xAlxTi2-x(PO4)3 (LATP)に着目した。LGPSとLATPはどちらも超イオン伝導体でありながらLi濃度という点で大きく異なる。LGPSは結晶構造内におけるLi濃度が高い物質であるが、LATPは単位体積当たりのLi量がLGPSの1/3程度でありLi濃度の低い物質である。このLi濃度がイオン相関と高速イオン伝導の関係にどのように影響するかを明らかにすべく、LATP単結晶のイオン伝導特性評価を行った。その結果、LGPSとは異なりイオン相関がイオン伝導を高速化させていることが示唆された。本研究の成果から、LGPSのように高濃度Liが存在する物質では、イオン相関によってLiイオンが渋滞し伝導は阻害されるが、LATPのようにLi濃度の低い物質では、イオン相関による同時拡散でイオン伝導が高速化することが明らかとなった。よって結晶構造内のLi濃度はイオン相関とイオン伝導の関係に強い影響を与え、高速イオン伝導にはある程度低いLi濃度であることが重要であることが示唆された。
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