研究成果の概要 |
本研究はNi酸化物の薄膜超伝導の①Pr4Ni3O8、②(Ln,A)NiO2(Ln=ランタノイド、A=Sr,Ca)バルク体での実現が目的である。①2つのNiサイトの一方を様々な3d元素で置換しキャリア量調整により超伝導発現を目指した。XAFSと熱電測定では相反するキャリア量変化が観測された。 中性子回折実験から置換元素はNi(1)サイトを主に占有しNi(2)サイトにも数%程度入る事が分かった。②Lnのサイズが小さいほど超伝導発現を阻害する残留酸素を除去し易くなったが、電気抵抗は半導体的傾向が強くなった。 両系においてバルク体での超伝導は実現しなかったが電子状態や結晶構造に関して多くの知見が得られた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
新超伝導体(Nd,Sr)NiO2は銅酸化物高温超伝導体と似てるが故に物性の詳細な比較が可能であり、高温超伝導機構解明や、約30年間、130 Kで頭打ちである超伝導転移温度を上昇させる指針抽出に大きく寄与するであろう事から非常に注目されている。しかし薄膜でしか超伝導が発現しないため研究の展開は限定的であり、バルク体での超伝導実現が熱望されている。これを受け①Pr4Ni3O8、②(Ln,A)NiO2(Ln=ランタノイド、A=Sr,Ca)バルク体での超伝導発現を目指した。両系において超伝導実現に至らなかったが、超伝導発現に向け、解決すべき点が明確になり、また両系の物性についての多くの知見が得られた。
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