研究課題/領域番号 |
21K04642
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
布谷 直義 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (40715314)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環境触媒 / 貴金属フリー / 揮発性有機化合物 / 酸化触媒 |
研究実績の概要 |
揮発性有機化合物(Volatile organic compounds; VOCs)は、ワックスやインク等の有機溶剤として広く使用されているが、人体や環境に有害な化合物でもある。本研究では、このようなVOCsをできる限り低温で燃焼できる貴金属フリー触媒の開発を目指している。本目的を達成するためには、大気中の酸素だけでは不十分と考えられることから、触媒の格子内酸素をVOCs酸化反応に関与させることが重要と考えられる。 前年度の研究において、格子内に酸化物イオンの伝導経路を有するアパタイト型La10Si6O27が、格子内からの酸素供給によりトルエン燃焼活性を促進できることを明らかにしている。そこで2022年度は、このLa10Si6O27に着目した。このLa10Si6O27に、低価数でありかつ価数変化しやすいCo2+/3+を導入したLa10Si5CoO27-dを合成したところ、高い酸素貯蔵放出特性が得られ、この材料自体を、触媒として用いたところ、トルエンを310℃で完全燃焼できることを明らかにした。 さらに、新しい助触媒として、ジルコニウム-スズ複合酸化物(ZrSnO4)に着目し、そこに低価数のSr2+を導入することにより酸化物イオン欠陥を形成させたところ、酸素貯蔵放出特性が向上することも明らかにした。これをPtとともにメソポーラスシリカに担持した結果、常圧80℃という温和な条件にもかかわらず、液相中のフェノールを99.7%除去できることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アパタイト型La10Si5CoO27-dは、従来から知られている主触媒であるペロブスカイト型酸化物などを担持せずとも、単独でトルエンを310℃で完全燃焼できることを明らかにした。このことはアパタイト型La10Si5CoO27-dが高活性な主触媒であることを意味している。さらに、新しい助触媒として、ジルコニウム-スズ複合酸化物ZrSnO4に着目し、低価数のSr2+を導入することにより酸素貯蔵放出特性が発現することも見出している。この触媒は液相中でのフェノール酸化分解に対して機能することを明らかにした。一方、2021年度に生じていた遅延の影響により、今年度も程度は小さいもののフィードバックに遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
アパタイト型La10S5CoO27-dが主触媒であることを見出したことから、合成法の工夫等による比表面積の増大を行う他、高温焼成により耐熱性を調べる。また、ZrSnO4系材料が助触媒として機能することを明らかにしたことから、ZrSnO4にSr2+以外の他の金属イオン(Ni2+/3+やFe2+/3+等)を添加し、酸素貯蔵放出特性を調べる。そこに、主触媒として分散担持させやすいLaCoO3やCo3O4を含浸担持した触媒を創成する。得られた触媒については、粉末X線回折測定、比表面積測定、X線光電子分光測定等の基礎物性評価に加え、酸素貯蔵放出特性および触媒活性を調べる。これらの測定から明らかになった知見は、随時触媒設計にフィードバックを行う。なお、2021年度のフィードバック遅延により2022年度も遅延が生じている。ただし、遅延程度は前年度と比較すると小さいため、合成条件等の精査により挽回する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度のフィードバック遅延の影響により、2022年度も程度は小さいものの遅延が生じた。これにより、未使用が生じた。本研究が目的としている高性能触媒を実現するためには遅延を挽回する必要があるため、この未使用額は2023年度に研究に必要な試薬類、ガス類、一般消耗品等の購入経費に充てる予定である。
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