研究課題/領域番号 |
21K04645
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
佐藤 泰史 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (90383504)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛍光体 / 複合アニオン化合物 / f-f発光 / 結晶サイト工学 / 水溶液合成プロセス |
研究実績の概要 |
1) OとFにより複合化したオーリビリウス型酸フッ化物のBi2NbO5FやBi2TaO5Fについて、アモルファス金属錯体法による酸化物前駆体合成とPVDFによるフッ素化処理を用いて試料作製を試みた。その結果、フッ化処理温度500℃、酸化物前駆体に対するPVDFが1.05倍において、いずれの試料ともオーリビリウス相が主相として生成することを確認した。続いて、作製した両試料の紫外-可視光吸収スペクトルを測定した結果、いずれも近紫外領域に吸収端を有し、近紫外光による励起が可能性であることを確認した。さらに両試料のバンドギャップエネルギー(Eg)は、F置換に伴う結晶相でのイオン性の増加から同じオーリビリウス型酸化物のBi2WO6に比べて増加していることを確認した。
2) Pr3+を賦活したペロブスカイト酸化物-酸窒化物固溶体CaHf1-xTaxO3-xNxについて、CaCN2を用いてフラックス処理を行った。フラックス量ならびに処理時の焼成プロファイルや温度等を詳細に検討した結果、最適条件で作製した試料において、ホスト物質の結晶性向上に伴うCaサイトに置換したPr3+からの発光強度の増加を確認した。
3) OとNで複合化したペロブスカイト酸窒化物のLaMO2N(M:Ti,Zr,Hf)について、発光低下の原因となる試料の黒ずみを抑えるため、アンモニア窒化処理時に生じる微量の金属窒化物の生成抑制について検討を行った。種々の合成パラメーターについて検討した結果、金属窒化物の生成は、主に酸化物前駆体の仮焼成温度に強く影響することがわかった。そして、500℃で仮焼成処理した酸化物前駆体をアンモニア窒化処理することで、黒ずみのない単相のLaTiO2NやLaHfO2N試料の作製が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目はホスト物質の候補選定、アニオンの複合化方法、候補物質となる試料の単相化といった項目を中心に検討を行い、第一段階となる具体的なホスト物質の選定と試料の単相合成についてはほぼ達成することができた。しかしながら、当初予定でしていた、作製に成功した物質系への発光イオンの賦活と蛍光体としての発光特性評価については、十分に検討することができなかった。このことを踏まえて、当初の予定よりもやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1) 前年度までに作製に成功したBi2NbO5FおよびBi2TaO5F相に対して、発光イオンである種々のLn3+の賦活を行い、近紫外光励起のよるLn3+からのf-f発光の実現を確認する。そして、試料の結晶性を高めることで、更なる発光特性の向上を目指す。また、Ln3+からのf-f型発光に適した新しい酸窒化物や酸フッ化物のホスト物質探索を進め、水溶性金属錯体を用いた酸化物前駆体合成と、アンモニアまたはメラニンよる窒化処理やPVDFによるフッ化処理を用いて単相試料合成を進めていく。
2) これまでに物質探索より候補物質とした抽出した酸窒化物系ホスト物質について、最適な作製条件での試料作製を進めていく。その上で、ホスト励起による賦活したLn3+イオンからのf-f発光を確認するため、ホスト物質のEg制御を検討する。例えば、ペロブスカイト酸窒化物LaMO2N(M:Ti, Zr, Hf)に対して、Mg2+やAl3+をMカチオンサイトに部分置換することで組成を酸化物側へシフトさせ、近紫外光相当のEgを有するホスト物質に制御する。そして、賦活したLn3+からのf-f発光の発現の有無を確認ならびに検証を行う。併せて、他の酸窒化物系ホスト物質についても同様のカチオンドーピングによるEg制御を行い、f-f発光型蛍光体に適した新しい酸窒化物ホスト物質を選定する。
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