研究課題/領域番号 |
21K04646
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
齋藤 紀子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (20354417)
|
研究分担者 |
大橋 直樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 拠点長 (60251617)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ハイブリッド / ハライド / 結晶成長 / 構造解析 / 新物質 |
研究実績の概要 |
有機-無機ハイブリッドハライド結晶は、次世代太陽電池の候補として注目されているが、接触感知フレキシブルデバイスなどの、軽量で柔軟な圧電デバイス応用にも期待できる。そのためには、ハイブリッドハライドの有機分子の自発的配向誘起による、結晶の対称性制御が必要である。本研究では、大きさの異なる有機分子の導入と、3d遷移金属元素を用いた無機フレームワークの構造変化を試み、結晶対称性への影響を調べる。溶液プロセスによって新物質を合成し、単結晶構造解析と密度汎関数法(DFT)計算によって有機分子イオンの配向を調べ、圧電体などへの応用を検討する。 ピエゾ電気特性を含む興味深い光電子物性を有する新規化合物の探索を目的として、ホルムアミジニウム(FA)-銅(Cu)-ヨウ化物(I)三元系における有機-無機ハイブリッド結晶の作製と解析を実施した。CsCu2I3と同じ構造型で結晶化させたFACu2I3結晶を、ホスフィン酸を用いた溶液法で合成した。実験的に精密化された結晶構造と理論的にシミュレーションされた結晶構造は、互いによく一致した。解析の結果、一次元の[Cu2I3]-鎖を持つFACu2I3は、圧電構造ではなく、中心対称性を持つ常誘電構造が最も安定な相であることが示された。さらに、FACu2I3は紫外光照射下で発光を示さなかった。発光特性を持たない理由を、水素結合を考慮した電子構造シミュレーションにより検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MAPbI3(MA: メチルアンモニウム)やFAPbI3(FA: ホルムアミジニウム)などの有機―無機ハイブリッドハライドは、構造-物性相関の検討において、無機結晶にない自由度を持つことができる。本年度は、金属とハロゲンを変えて、無機フレームワーク構造の異なるハイブリッドハライド結晶の合成を行った。ハロゲンはこれまで用いていたヨウ素に代えて、塩素を用いてバンドギャップを広げることを試みた。金属については、銅やすずなどのd電子を持たない金属元素に加えて、価数制御でイオン半径、配位数、配位形式の変化が期待される、鉄、マンガンなどの3d遷移金属元素を用いた合成を試みた。
|
今後の研究の推進方策 |
大きさの異なる有機分子を有する新規ハイブリッドハライドの合成を行う。有機分子には、FAやMAの他、Butylammoniumなどの長い有機鎖を持つアミン、Trimethylchloromethyl ammonium、Pyrrolidiniumなど大きい分子の導入と、それらの組み合わせを試みる。大きな有機カチオンが導入されると、無機層は大きな有機分子スペーサーによって分離される一方、有機層と無機層の間の水素結合作用によって凝集力が保持されることで、低次元化合物の生成が期待できる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた薄膜合成装置を購入しなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、研究業務員の人件費に用い、化学合成実験を加速させる。
|