研究課題/領域番号 |
21K04648
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
小川 貴史 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (90515561)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 欠陥蛍石 / パイロクロア / 第一原理計算 / 結晶構造探索 / モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
A2B2O7 (A = 希土類元素、B = Ti,Zr,Hf,Sn)等の欠陥蛍石型派生構造系における低温秩序構造の探索を実施し、得られる結晶相の熱的安定性や材料物性の解析を進めるため、関連する基礎手法の構築と適用検討を進めた。構造探索の手法としては、第一原理計算及びニューラルネットワークポテンシャル(NNP)とレプリカ交換モンテカルロ法(RXMC)を連携した構造配置探索のスキーム(abicsコード)を用いる。冷却速度を遅くした場合に秩序構造が出現することが実験的に確認されているYb-Ti-O系を対象とし、RXMCを用いた構造探索手法の計算環境の整備と適用検討を進め、計算条件を決定した。また、複数の蛍石型派生構造の間の安定性変化の計算可能性を調べるため、Dy2Zr2O7において高圧下で現れる構造の熱力学的安定性(構造相転移)の計算を実施した。具体的にはパイロクロア構造、cotunnite構造、ランダムなカチオン配置を有する欠陥蛍石型構造等の候補構造のエネルギーの圧力依存性から、これらの派生構造の間の熱力学的安定性の関係を明らかにした。 構造探索より得られた蛍石型派生構造の材料物性解析のため、第一原理計算を学習データとして機械学習ポテンシャルを作成し、得られたポテンシャルを用いて酸化物イオン伝導の分子動力学シミュレーションを試みた。2種類のカチオンが固溶した蛍石型構造において、平均2乗変位及び拡散係数を求め、ボロノイマッピングに基づく欠陥挙動の解析を行った。また、同系における点欠陥形成エネルギーの計算と熱平衡点欠陥濃度解析を行った結果、カチオン固溶により点欠陥濃度が増加する実験的な傾向を再現することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Yb-Ti-O蛍石型酸化物のRXMCを用いた構造探索手法に関する基礎検討を進め、今後必要となる計算条件を決定した。また、Zr系での新たなカチオン秩序構造の検討も進めることができた。蛍石型構造の材料物性を調べる手法に関して、機械学習ポテンシャルを用いた分子動力学計算を導入し実施するとともに、点欠陥濃度解析の有効性を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
R-Ti-O系の第一原理計算に基づくレプリカ交換モンテカルロサンプリングによる構造探索を更に進め、原子配置の温度依存性を詳しく解析するとともに、組成依存性の検討へ展開を図る。また、これまでに準備をした分子動力学計算や点欠陥濃度計算手法を用いて、得られた秩序構造の酸化物イオンの拡散性や点欠陥挙動の系統的な解析を実施する。一方、TiをZrへ置き換えた系への可能性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した出張がオンラインとなったこと、投稿論文の準備が遅れたことが理由であり、次年度、論文投稿や出版に係る費用として使用する予定である。
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