研究実績の概要 |
A2B2O7 (A = 希土類元素、B = Ti,Zr,Hf,Sn)等の蛍石型派生構造において低温で生じるカチオンとアニオンの秩序構造を明らかにし、熱的安定性や材料物性の解析を行うため、関連する基礎計算手法の構築と適用検討を進めた。構造探索の手法としては、第一原理計算、ニューラルネットワークポテンシャル(NNP)、レプリカ交換モンテカルロ法(RXMC)を連携した構造配置探索のスキーム(abicsコード)を用いた。冷却速度を遅くした場合に秩序構造が出現することが実験的に確認されているYb-Ti-O系を対象とし、上記構造探索手法を適用し、エネルギーや各原子サイト周囲の配位環境の温度依存性を解析した。結果として、酸素空孔がYb周囲に比べ、Ti周囲に増加して存在する傾向、及び、各カチオンがランダム分布に比べてクラスタリングする傾向が存在することが明らかになった。このような局所的に秩序化する傾向は温度が低いほど強くなる。一方、温度の上昇により、カチオンの相関はランダムに近づくが、そのような温度域においても酸素空孔分布の秩序化傾向は依然として残ることが示された。また、酸素と酸素空孔の間の2体相関には段階的な変化が見られ、多段的な局所構造変化の存在が示唆された。エネルギーの揺らぎから計算される比熱にはピークが観測され、酸素(酸素空孔)分布の秩序状態変化に対応するものと考えられる。このようなNNPを援用したRXMCサンプリング手法は、複合酸化物における冷却速度に依存した局所秩序状態の存在を理論的に調べることに幅広く適用可能である。
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