研究実績の概要 |
電界印加の効果を明らかにするために、1)低温酸化Si膜に電界を印加せずにNH3アニール処理によるOH基除去効果のアニール温度・時間依存性、2) OH量減少のより正確な定量的評価方法を検討した。 1) 低温堆積した厚さ100~150 nmシリカ膜を、120, 150, 180, 200, 220℃の5種類の温度でそれぞれ、5, 10, 20, 60, 120, 240分の6種類の時間でアンモニアアニール処理を行った。アニールガスは、流量0.2lmのNH3及び0.05lmのN2ガスを用いた。その結果、大まかには堆積直後のOH量が120℃、5分の処理で約1/2まで急激に減少し、その後は、時間と共に緩やかに減少して、240分では約3/8まで減少した。OH基の起因ピークはSi-OHによる950cm-1付近のもの(OH-1)とOHやH2Oによる3300cm-1付近のもの (OH-2)の2種類があるが、何れも同様な傾向を示した。ただ、OH-2のものに比べ、OH-1の方がアニール時間と温度による効果が高い。例えば、堆積直後からの減少割合Rが、120℃では5から240分に長くすると、OH-1, OH-2のRは、それぞれR = ~0.56/0.50からR = ~0.35/ 0.32となり、また220℃では、R =~ 0.33/ 0.41からR = ~0.13/ 0.28となった。 2) 950cm-1付近に現れるOH-1ピークは、1070cm-1にピークを持つSi-O-Siによるもの(Si-Oピーク)と重なり、残留OH量の定量評価が難しい。そこで、FT-IRスペクトル強度を波数の一階微分を行い、それによる極小、極大ピーク値の差がOHによる信号強度に比例することを理論的に検証した。また、OH基量減少と共に両極値波数間距離が徐々に減少し、ピークが無くなれば、ゼロとなることも分かった。
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今後の研究の推進方策 |
再現性とより正確な定量評価が可能となったので、今後は、当初の計画通り、以下の様に進めて行きたい。 1)Si基板上に堆積した厚さdS = 50~200nmのSiOx膜に、堆積温度Ta = 100~250℃間でNH3アニールを行い、各温度でのH2O, OH脱離量の膜厚dS依存性を調査する。その際に、事前にOH基を終端する有機溶液(例えばC6H18NSi2:HMDS)を用いて試料表面処理を施し、有機溶液によるOH除去効果の確認も行う。 2)1)の実験結果から膜厚dC及びNH3アニール温度を適切に決め、Al, Siの真空蒸着、あるいは導電性テープにより試料全面に電極を形成した試料に対してNH3アニールを行い、電極の効果、膜厚dCの最適化を調査し、考察する。また、NH3アニールと同時に電界印加を行い、それによるOH脱離効果を調査し、最適な条件を見出す。 3)イオン注入により原子間結合を切断したSiOx膜をTa=120℃以上のNH3アニールを行い、膜の緻密化の有無、原子間結合度合、残留H2O, OH脱離量を評価する。また、湿度(40~50%)で大気保存した処理試料の再付着量も評価する。注入不純物としてO, Siなどを用いるが、注入加速電圧Vaは膜厚dSの半分が注入イオンの射影飛程になるようにし、注入量Dは、ほとんどの結合手が切れる、膜中全原子数の1/100程度にする。 4) 1)~3)の結果から、残留H2O, OH減少のメカニズムを明らかにし、その量が目標値以上に減少できる条件を示す。また処理試料の電流-電圧(I-V)特性を測定し、電界強度3MV/cmで電流密度10-8A/cm2以下となるように、2), 3)事項の再検討も含めて、最終目的を達成する。
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