研究実績の概要 |
Na0.5Bi0.5TiO3 (NBT)の従来から行われてきた固相反応法による合成では、1120℃以上の高温で長時間焼成を必要とするためにNaとBiが揮発し、仕込み組成から実際の組成がずれてしまう。NBT中のNaとBiが欠損することにより、正しい評価が行われていないのが現状である。そこで本研究課題では、錯体重合法を用いた低温合成により、様々な元素置換を行った無欠損NBTの合成を行い、リートベルト解析により、モルフォトロピック相境界(MPB)の再評価を行った。さらに顕微ラマンを用いた偏光測定による2相共存下における両相のドメインの観察にも挑戦した。 令和5年度は、当初の計画に従い「Zr, Ce置換NBTの合成」、「リートベルト解析」、「電気的性質の測定」、「ラマン散乱によるドメインの観察」、「TEM」の項目を実施した。NaNbO3置換NBTの合成に関しては、3年間ことごとく失敗し続けてきたが、水溶性Ti, Nb錯体を用いることにより成功するができた。令和4年度は低温ラマンにおいて、試料室内の温度を均等化し温度分布を減らす目的で、真空系を導入しようと考えていたが、研究に用いる物品の多くが、ことごとく予想以上の物価高騰に見舞われ、真空系の導入は断念せざるを得なかった。令和5年度の予算では、真空系を導入することができ、実験精度を高めて実験を行うことができた。 3年間の期間で行われた本研究課題は、途中、思うような試料が合成できず苦労を極めたが、最終的には申請書で書いた研究計画を全て行うことができた。
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