ユビキタス元素として、SnとBiを主成分に用いた低光弾性酸化物ガラスの組成探索を行い、光弾性定数が<|0.1 x 10^12 Pa^-1|のガラス組成を見出している。酸化物ガラスのゼロ光弾性を発現するメカニズムを考察するため,重要な性能指数である「電子分極率性」の観点から低光弾性組成ガラスを整理した。既往のデータをもとに電子分極率を組成毎に割り当て,ガラス組成全体としての電子分極率をこれまでに光弾性定数を調査してきたガラスすべてに適用した。ケイ酸塩、ホウ酸塩ならびにリン酸ガラスのネットワークは3次元的につながった鎖状構造から成るため,鎖の長さ,分岐の仕方が多様である。我々は、核磁気共鳴法によって,これらの鎖状構造を分類し,種類ごとの割合を求めて,光弾性定数が極めて小さいガラス組成では,ガラス全体の電子分極率が大きくなる傾向を得た。 酸化物ガラスの光弾性定数と屈折率は、高電子分極イオンが高濃度に含まれる点で、密接な相関性を有している。屈折率は、電子分極率に比例相関し,高分極性の金属酸化物を多量に含むことで屈折率を増加させるという従来から提唱されている考え方を,ユビキタス元素から成る酸化物ガラスに対して、構造情報に基づいた定量的データによって裏付けている。ガラスの光弾性定数に関する本年度の成果として,酸化物ガラス,特にリン酸塩ガラスの電子分極率を考えることによって,未知のガラス組成に対する光弾性定数を予測できることにある。偏光光学素子として,鉛のような毒性元素を全く用いずに,あらかじめ光学特性を予想できることは大変意義深い結果となっている。
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