研究課題
本研究課題では、次世代スピントロニクスの基幹材料として有望視されている2次元磁性体ナノシートに関し、大量合成手法の確立に加え、磁性パラメーターの獲得を目指す。具体的には、酸素や水に対して比較的耐性があり、磁気転移温度が比較的高い2次元磁性体であるFe3GeTe2, MPS3(M:遷移金属イオン)などを探索対象とする。2023年度は、前年度に引き続いて、磁性ナノシートの母物質として鉄リントリカルコゲナイド(FePS3)を取り扱い、電気化学を活用したナノシート化を重点的に検討した。また、磁性ナノシートの母物質としてコバルト-アルミニウム層状複水酸化物(Co-Al LDH)を取り扱い、磁場存在下での伝導性の評価を引き続き行った。(1) 電気化学を活用したFePS3のナノシート化前年度までの研究において得られているFePS3の比較的良質な層状結晶に対して、電気化学反応を利用して層状結晶の横方向サイズを大きく損なわないナノシート化の条件を探索した。特に2023年度は、ファンデルワールス層状結晶のナノシート化において広く用いられる超音波照射を組み合わせた電気化学反応を検討した。電気化学反応系の支持電解質と溶媒のスクリーニングに加えて照射する超音波の強度を系統的に探索した。しかしながら、これまでのところ、十分な横方向サイズをもつFePS3のナノシート化が進行する条件は得られなかった。(2) 磁場存在下でのCo-Al LDHの伝導性の評価前年度から、Co-Al LDHをスピントロニクスへ展開することを視野に入れ、伝導度・電子輸送特性を評価することを開始した。特に2023年度はさまざまな層間距離をもつCo-Al LDHの良質な結晶性試料に対して磁場存在下での電気伝導度を測定した。すべての試料の測定は完了していないが、これまでのところ、層間距離に応じた電気伝導度の違いは見られていない。
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Angewandte Chemie International Edition
巻: 62 ページ: e202301925-9pp
10.1002/anie.202301925