研究課題/領域番号 |
21K04656
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
冨田 恒之 東海大学, 理学部, 准教授 (00419235)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アップコンバージョン蛍光体 / 希土類 / 酸化物 / 錯体重合法 / 多フォノン緩和 |
研究実績の概要 |
アップコンバージョン発光とは、エネルギーの低い長波長の光を多光子・多段階励起により、エネルギーの高い短波長の光に変換する現象である。太陽電池や3D ボリュームディスプレイなど、様々な分野での応用が期待されている。一般的に酸化物は化学的、物理的に安定であり、高温環境での用途に有益であるため、近年特に高温環境下での応用が注目されている。2021年度の研究ではBaGd2ZnO5を母体材料としたアップコンバージョン蛍光体を作製し、ErとYbの濃度に対する発光強度の評価を行った。試料は錯体重合法で合成した。Ba、Zn、Er、Yb、Gdの硝酸塩水溶液を種々の割合で混合し、クエン酸とプロピレングリコールを加え、撹拌後に120℃で蒸発乾固、450℃で仮焼、1200℃で焼成することで目的物を合成した。Erのドープ量を1~20mol%、Ybのドープ量を1~20mol%置換し、約200種類のドープ量を検証した。X線回折測定より、得られたサンプルはいずれもBaGd2ZnO5の結晶構造と一致し、ErとYbが均一にドープされていることが確認された。980nmの近赤外レーザーを励起光に用いてアップコンバージョン発光スペクトルの測定を行った。Erによる550nm付近の緑色発光と670nm付近の赤色発光が見られた。Er5%、Yb10%をドープした試料が最も高いアップコンバージョン発光効率を示した。この試料の発光色は橙色であり、主たる発光は670nmの赤色発光であった。この結果より、本母体結晶が赤色発光に必要な緩和を促していると考えられ、特にGdとOとの間のフォノン振動が寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤色発光を示すBaGd2ZnO5において、十分なサンプル数を合成し、精緻にドープ量を最適化できた。赤色発光としては高い発光が得られており、当初の計画通りに順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き赤色発光の母体探索を行うのに加えて、ツリウムイオンを用いた800nmの近赤外発光についても最適化を行う。その結果を受けて、母体結晶のフォノンとアップコンバージョン発光プロセス中の緩和との関係性を明らかにする。
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