研究実績の概要 |
本研究では、次世代パワーデバイス用材料のひとつとして期待されるβ-酸化ガリウム (β-Ga2O3) エピタキシャル層を水溶液法により形成することを目的とする。通常、β-Ga2O3層は500℃~1000℃の高温かつ高真空を利用する気相法で作製される。それに対し、低温・低温エネルギー、かつ大気圧を利用する水溶液法でのβ-Ga2O3層形成が可能となれば、環境負荷の低減だけでなく、製造コスト低減によりβ-Ga2O3の普及への一助となると考えられる。本研究では、水溶性ガリウム塩であるヘキサフルオロガリウム酸アンモニウム ((NH4)3GaF6) を合成し、その水溶液中での加水分解反応を制御することで、従来は困難であった水溶液中でのβ-酸化ガリウム層形成を目指す。また、Non-Seed CBD (Chemical Bath Deposition, 化学浴堆積)法を利用することで、β-Ga2O3エピタキシャル層の低温直接形成を目指す。 本年度は、(NH4)3GaF6を使用して、Non-Seed CBD法によるガリウム化合物の成膜を行った。種々の添加剤や成膜条件を検討したものの、いずれの条件においても生成相はオキシ水酸化ガリウム(GaOOH)となり、酸化ガリウム相を得ることはできなかった。ただし、成膜条件によっては、六角柱状のGaOOH結晶が緻密に配列した構造の膜が得られるとわかった。(NH4)3GaF6の効果を検証するため、硝酸ガリウムGa(NO3)3を使用して同じ成膜条件で実験したところ、四角柱状のGaOOH結晶が比較的密に配列した構造の膜となった。これらの結晶形状の変化より、フッ化物イオンが特定面に配位すると結晶成長が異方的に進行すると考察した。また、得られたGaOOH膜を熱処理すると、結晶相はGa2O3となったが、水分子の脱離に伴い気孔が形成した。
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