Yb添加シリカファイバレーザーは加工用に広く普及しているが、赤外線領域で吸収が少ない銅を加工することが困難である。このため、ファイバレーザーの発振波長をより短波長化することが求められている。最近、青色LDの高出力化が急激に進み、青色LDを励起源とする可視ファイバレーザーの開発が活発化している。申請者らは、スロープ効率22%、出力110mWを越える可視シリカファイバレーザーの開発に初めて成功したが、実用化には“フォトダークニング(PD)抑制”という非常に困難な課題がある。PDとは、励起レーザーにより欠陥が生成する現象で、生成した欠陥による吸収増加でレーザー発振が阻害される。そこで本研究では、「高出力・可視シリカファイバレーザーの実用化」に必須の基礎的研究として、「可視シリカファイバレーザーの高出力化を阻害するPDの機構解明」を目的とした研究に取り組んでいる。また、フォトダークニングを抑制する共添加イオンの探索を行い、実用化に適う希土類添加シリカガラス素材の開発を目指している。 2023年度は、昨年度明らかにしたB共添加によるPD抑制効果を明らかにするために、B関連欠陥生成種の同定、および欠陥生成モデルの提案を行った。B関連欠陥の吸収帯は、従来明らかになっていなかったため、等温アニール処理をした試料のESRおよび吸収スペクトル測定を行い、初めて決定した。この結果を用いて、DyAlB添加シリカガラスのフォトダークニングを詳細に調べ、その機構を明らかにした。
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