研究課題/領域番号 |
21K04663
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
内藤 圭史 岐阜大学, 工学部, 准教授 (50759339)
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研究分担者 |
隈部 和弘 岐阜大学, 工学部, 助教 (80456706)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウニ状炭素粒子 / 炭素繊維 / 化学気相成長法 / 繊維強化プラスチック |
研究実績の概要 |
繊維強化プラスチック(FRP)の欠点は,繊維が配向してない方向に弱いことである.この欠点を改善するためには,繊維を全方向に配向させる(つまり,等方性FRPを作製する)必要があるが, 3次元(面内+面外)等方性FRPの作製は樹脂流動を伴う成形で有ろうと無かろうと極めて困難と言える.この様な状況に対し,申請者はウニ状炭素粒子を活用し,樹脂流動を伴う成形であっても,3次元等方性FRPを創生する本研究を着想した.まず,ウニ状炭素粒子を作製し,その際の作製条件と粒子形状の関係を見出したうえで,ウニ状炭素粒子充填樹脂を押出・射出成形し,その成形条件と3次元各方向に対する力学特性の関係を明らかとする.また,成形条件が充填材の分散状態や形状(損傷)に与える影響にも着目し,3次元等方性FRP作製のための最適成形条件を解明する.本研究は,樹脂流動を伴う成形であっても3次元等方性FRPの創生が可能かを問い,これを解明するものとなる. 第二年度は,ウニ状炭素粒子を充填したFRPの作製とその力学特性の評価を目的として研究を実施した.その結果,現状では球状炭素粒子(ウニ状炭素粒子の基材)充填ポリプロピレンとウニ状炭素粒子充填ポリプロピレンでは引張特性に差が見られなかった.これに対し,試験後の試料の破断面を観察したところ,ウニ状炭素粒子充填ポリプロピレンでは繊維部分(ウニの棘にあたる部分)の折損や粒子同士の凝集があり,これらが引張特性に悪影響を与えている可能性があることが分かった.繊維部分の折損の原因としては,粒子部分と繊維部分の接合がそもそも弱い可能性と,成形プロセス(スクリューによるせん断など)に問題のある可能性の2つが挙げられる.この原因の解明とその改善が今後の課題の1つである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第二年度は,ウニ状炭素粒子を充填したFRPの作製とその力学特性の評価を目的とした.そのために,まずは触媒化学気相成長法(Cat-CVD)によって得られたウニ状炭素粒子をポリプロピレンと溶融混錬し,これを射出成型することによりウニ状炭素粒子充填ポリプロピレンを得た,次に,この試料から作製したダンベル試験片に対し引張試験を実施することにより,試料の引張特性を評価した.その結果,現状では球状炭素粒子(ウニ状炭素粒子の基材)充填ポリプロピレンとウニ状炭素粒子充填ポリプロピレンでは引張特性に差が見られなかった.これに対し,試験後の試料の破断面を観察したところ,ウニ状炭素粒子充填ポリプロピレンでは繊維部分(ウニの棘にあたる部分)の折損や粒子同士の凝集があり,これらが引張特性に悪影響を与えている可能性があることが分かった.繊維部分の折損の原因としては,粒子部分と繊維部分の接合がそもそも弱い可能性と,成形プロセス(スクリューによるせん断など)に問題のある可能性の2つが挙げられる.この原因の解明とその改善が今後の課題の1つである. いずれにせよ,本年度の目的(ウニ状炭素粒子を充填したFRPの作製とその力学特性の評価)の大部分を達成し,次年度の内容に関わる部分(充填材の分散状態や,繊維部分の折損の有無)にまで研究が及んでいるため,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に判明した課題(得られた粒子が,繊維部分のアスペクト比や直線性等の観点において,依然として複合材料の充填材として理想的とは言えない)と第二年度に判明した課題(成型後の繊維部分の折損)に対応しつつ,FRPの成形条件と力学特性(3次元)の関係を解明する.特に,成形条件が充填材の分散状態や,充填材の形状(繊維部分の折損の有無)に与える影響に注目して研究を進め,最終的には,ここで得た知見および上記②で得た知見を元に,高強度・高弾性率な3次元等方性FRP作製のための最適成形条件を決定する.なお,充填材がウニ状のため,FRPは3次元等方性となるが,成形原理上,母材である熱可塑性樹脂には分子鎖の配向が生じる.故に,それがFRPの等方性に対して与える影響についても注目し,研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も当該研究課題に関連する物品を購入し,必要な旅費等を執行する計画であったが,その後契約締結した別企業との共同研究で消耗品を購入することができたことにより,物品費が当初計画を下回った.また,コロナ禍の影響で参加予定であった学会等がオンライン開催になったことにより,旅費等が当初計画を下回った. 次年度は研究を一層進めるため,さらに最近の価格高騰により,物品費が当初計画を大幅に上回る可能性がある.また,コロナ禍から徐々に通常に戻ることにより,学会参加が現地対面となる可能性が高くなり,旅費等が当初計画を上回る可能性がある.
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