2年度目となる2022年度は、申請時に掲げた3つの研究項目、①様々な構造を有するイオン液体の設計と合成、②合成されたイオン液体を修飾した電極の作製とその諸性質の特定、③得られたイオン液体修飾電極のへのプローブ分子の固定化とSEIRAS測定による検討、のうち、おもに ③に関する研究を中心に遂行した。なお①と②に関しては、③の進捗状況に合わせ、研究が滞ることのないように適宜電極修飾用イオン液体の合成とその修飾電極の作製、およびその評価を行った。 ③に関しては、酸化還元プローブとして金属錯体である「Fe(CN)6]3-/4-を用い、この錯体を内包したイオン液体修飾電極の作製を行った。錯体の内包の確認は電気化学測定による錯体の酸化還元波の観測、およびFT-IR測定による錯体由来のC≡N伸縮振動のピークの観測により確認した。 錯体を内包したイオン液体修飾電極の表面増強赤外分光スペクトル(SEIRAS)を測定したところ、電位の変化に伴って錯体由来のC≡N伸縮振動のピークが強度の増減をともないながら、可逆的なピーク波数のシフトを示した。これは錯体のFeイオンの酸化数の変化(2+/3+)にともなう振動強度の変化、および電極上に修飾されたイオン液体のカチオン部位(4級ホスホニウム)と錯体の配位子CNとの間の相互作用によるものと考えられる。このような挙動は、以前の我々の予備的な測定においても観測されており、電極上に修飾されたイオン液体中の金属錯体の挙動に関して、再現性のあるデータを収集することができた。
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