研究課題/領域番号 |
21K04666
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
堀邊 英夫 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00372243)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 導電性複合材料 / ポリマーアロイ / ミクロ相分離 / 常温抵抗率 / モルフォロジー制御 / PTC特性 / 永久ヒューズ |
研究実績の概要 |
永久ヒューズ用導電性複合材料のモルフォロジー制御による常温抵抗率の低減化を目的に研究を行っている。ポリマーに導電フィラーを分散した導電性複合材料において、常温時の電気抵抗を低減させ、かつ温度に対し急激に電気抵抗を増大させることで、繰り返し使用可能な永久ヒューズに用いる材料を開発している。永久ヒューズ用材料としては、絶縁性のポリマーを用いながらも常温時の抵抗率を大幅に低減することが重要である。これまで研究代表者らはポリマーの高次構造やポリマー中の導電フィラーの分散・凝集構造の制御により、常温抵抗率の低減に取組んできた。今回、ミクロ相分離させた非相溶系の結晶性/結晶性ポリマーアロイのモルフォロジー制御により共連続構造を形成し、導電フィラーを両ポリマーの界面へ局在化させることで、常温抵抗率を低減することを狙ってきた。 具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/高密度ポリエチレン(HDPE)のポリマーアロイにおいて、PVDF/HDPEをあらかじめ混練しそこに導電フィラー(カーボンブラック(CB))を混練した場合、ポリマーアロイのブレンド比で常温抵抗率が大きく異なることが判明した。また、HDPE/PVDFにCBを混練した場合、HDPEにCBを混練後PVDFを混練した場合、PVDFにCBを混練後HDPEを混練した場合で、混練順序を変えることで常温抵抗率が大きく異なることも判明した。それぞれの混練方法において、混練時間を変更することでも常温抵抗率が変化することも判明した。 導電性複合材料をPVDFのみを溶解する溶媒に溶解させることで、溶媒の透明性を評価することにより、CBがどちらのポリマーに含有されていたかを評価する「溶解実験」を行った。さらに、SEM-EDSによりCBがPVDFに含有していたかを評価しながら、溶解実験の結果と合わせ、常温抵抗率の低減原因について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミクロ相分離させた非相溶系の結晶性/結晶性ポリマーアロイのモルフォロジー制御により共連続構造を形成し、導電フィラーのポリマーへの分散を制御することで、導電性複合材料の常温抵抗率を低減した。具体的には、両ポリマーのブレンド比、あるいはPVDF、HDPE、導電フィラーの混練順序を変更することにより、常温抵抗率の低減化を達成した。SEM-EDS、溶解実験により、常温抵抗率の低減化が導電フィラーのポリマーの共連続構造の形成とモルフォロジー制御の結果であることが判明した。以上より、常温抵抗率の低減化を達成するとともに、その原因についてもあるレベルで解明できていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現状、ミクロ相分離させた非相溶系の結晶性/結晶性ポリマーアロイのモルフォロジー制御により共連続構造を形成するところまでは達成したが、導電フィラーを両ポリマーの界面へ局在化させることに関しては混練時間の制御である程度は可能になったが完全には界面には凝集できていないことがSEM-EDS測定により判明した。今後、ポリマーの組み合わせの変更を行うとともに、導電フィラーをCBから金属に変更することでさらに導電性複合材料の常温抵抗率の低減化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度使用予定が変更になり来年度使用することになった。
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