研究課題/領域番号 |
21K04667
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
平栗 健二 東京電機大学, 工学部, 教授 (60225505)
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研究分担者 |
馬目 佳信 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30219539)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DLCコーティング / 抗菌性 / Cu濃度 / 生体必須元素 / 生体親和性 |
研究実績の概要 |
令和3年度においては、Cuを含むグラファイト特殊ターゲットを用いることで独創的スパッタ法を構築し、ターゲットからCuを有効にDLC内に導入する混合ターゲットスパッタ(Mist : Mixture sputtering target)法を実証する計画として立案した。さらに、抗菌性の検証では、Cuを含むDLCに対しての抗菌傾向が認められる実験結果の獲得である。「Cu-DLC創製プロセスの開発と抗ウイルスおよび抗菌性検証」の項目について、研究計画としていた「Mist法におけるCu-DLCの最適創製手法の開発および抗菌性評価」の実験を実施し、基礎的なデータの収集およびその解析を行った。DLC(Diamond-like carbon)中にCuの含有量を制御性良く導入するために提案したMist法を用いて行った。作製条件の調整により、Ti 基板上にCu濃度20wt%から90wt%のDLCを創製することができた。抗菌性評価は感染症誘起の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用いたJIS Z 2801によるフィルム密着法で実施した。また、各試料についてRaman分光装置による膜表面構造分析および試料最表面の元素比率をX線光電子分光装置 (XPS) を用いて調査した。 令和3年度の成果については、Cu-DLCにおいての黄色ブドウ球菌に対する抗菌性は検出限界値レベル (10 [CFU] 未満)で十分な抗菌活性値(Antibacterial value R)を示した。これらの結果から、Cu-DLC内のCu濃度、Cu構造の測定結果と抗菌性の関係性について検討した。「Cu含有DLCの作製と抗菌性評価および滅菌処理に対する膜耐久性評価」に関して、国内学会(応用物理学会、ダイヤモンドシンポジウム)での公表を行った(研究発表参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度においては、申請時の研究計画(令和3年度および令和5年度)に沿った実験を実施し、概ね計画通りの目標に設定していた成果が得られている。初年度は、特殊ターゲットスパッタ法の装置改良を実施し、銅ドープダイヤモンド状炭素(Cu-DLC)膜の作製方法を検討した。そして、DLC内の含有Cu濃度を制御する手法を開発し、作製条件の調整を行った。Cu-DLCの作製条件を制御することで、DLC内に含まれるCu量を調整できた。試料のXPS解析の結果から、試料内に存在するCu量は、作製条件である印加電圧とパルス時間に依存することが解明できた。抗菌特性については、黄色ブドウ球菌を用いて検証した結果、想定される4.0以上の抗菌活性値を示した。試料の分析結果と抗菌性との関係性を検討した1年目の研究成果は、順調に進んでいる。 今年度は、1年目の成果を踏まえて、2年目となる令和4年度の研究計画に沿った実験を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に記載した令和4年度の研究目的である「抗ウイルスおよび抗菌効果を有するCu安定性保持のためのDLC割合の同定」に沿った研究を実施する予定である。また、令和3年度に得られた研究成果に基づいた実験計画の一部追加実験を行う。 試料創成によって得られたCu-DLC試料の表面電位や表面構造を解析することで、Cuの活性度および関連元素の結合状態を評価する。抗菌性試験(ISO 20743法)および抗ウイルス評価(ISO 18184法)を用い、菌の形状や生育環境を考慮してグラム陰性好気性球菌のレジオネラ族、グラム陰性通気嫌気性桿菌のサルモネラ菌を候補に挙げた検証を行う。ウイルスは、胃腸炎を引き起こすロタウイルス(Rotavirus)への効果について検証する予定である。 それらの結果を総合的に考察することで、具体的な研究計画となる「抗菌および抗ウイルス活性値の特定およびDLCの経時変化解析」を進める。
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