研究課題/領域番号 |
21K04672
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
小林 靖之 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 総括研究員 (00416330)
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研究分担者 |
池田 慎吾 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (60511152)
中谷 真大 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (10882855)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フッ素樹脂 / 異種材料接合 / プラズマ表面改質 / 次世代通信 |
研究実績の概要 |
フッ素樹脂は耐熱性,耐薬品性,電気的特性に優れ,近年ではエレクトロニクス分野や医療分野への利用が飛躍的に増加している。一方で,フッ素樹脂は難接着性の素材であるため,部材として組み込むためには信頼性の高い異種材料との接合技術が必須となる。本研究ではプラズマ表面改質を利用して,樹脂と金属を平滑,かつ接着剤フリーで直接接合する技術を確立する。 反応性プラズマと真空紫外光を組み合わせ,反応ラジカル種を制御することで,フッ素樹脂などの低誘電損失樹脂基板を効果的に表面改質し,めっきあるいは金属箔との接着を実現する。 本年度は,真空紫外光(VUV)アシストプラズマ装置の作製をおこない,VUVによるアンモニアラジカル発生について検証した。また,アンモニア雰囲気下におけるVUV表面改質処理についても検討した。フッ素樹脂PFA, FEPに対して表面改質をおこない,酸素含有官能基を表面に導入することなく,高密度にアミノ基を導入可能な最適条件を検討した。 また,VUV光源を用いたフッ素樹脂の表面改質の可能性について検討した。アンモニアガスをフローさせ,チャンバー内圧力を調整してフッ素樹脂PFAを表面改質した。接触角はチャンバー内圧力に依存し,500Pa付近に極小値が存在することがわかった。圧力の低い100Paでは接触角は100°程度であり表面改質の程度は小さい。これはガス分子の速度が速く,VUV照射により効率的にラジカル生成が起こっていないためと思われる。一方,圧力の高い領域ではアンモニアガスのVUV吸収によりラジカル化反応はおこるが,基板表面にVUV光が到達できず,フッ素樹脂の十分な改質が起こらないと考えられる。今後は,照射距離,時間,圧力などのパラメータについて最適化をおこなっていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定していた計画では,プラズマチャンバー内部に直接真空紫外光を照射可能な装置を想定しており,そのVUVアシストプラズマ装置については作製を完了した。アンモニア分子のVUV照射によるラジカル発生とプラズマ表面改質の併用により,フッ素樹脂表面のアミノ化反応がより進行すると考えられたが,VUV照射による表面改質効果の顕著な差異は認められなかった。これは低圧力下ではアンモニアガスのラジカル化の効率が悪いためと考えられる。そのため,現在,圧力が高い状態でVUV光を照射可能な装置を新たに作製し,実験に取り組んである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的であるVUVアシストプラズマ装置については,有意義なVUVによる効果は認められなかったが,VUV光による直接表面改質実験からアンモニアラジカルの発生を確認できた。次年度は,プラズマ装置のガス導入ラインを改造し,アンモニアラジカルを効率的にチャンバーへ導入するシステムを構築し,以下の項目について実験を進める。 ①表面改質による高密度アミノ基導入条件の検討をおこなう。②FEP,PFA,SPS,PPSなどの種々の低誘電損失樹脂フィルム材料の表面改質と金属との接着実験を行い,最適改質条件について検討する。③長期信頼性試験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はVUVアシスト装置開発の予備実験において有意義な結果が得られなかったため,新規プラズマ装置の作製を断念せざるを得なかった。次年度は新規なVUVアシストプラズマ装置を設計し,装置作製に取り組む。
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