研究実績の概要 |
フッ素樹脂は耐熱性,耐薬品性,電気的特性に優れ,近年ではエレクトロニクス分野や医療分野への利用が飛躍的に増加している。一方で,フッ素樹脂は難接着性の素材であるため,部材として組み込むためには信頼性の高い接着技術が必須となる。本年度は,各種金属とフッ素樹脂の直接接着について検討した。 フッ素系樹脂PFAと銅との直接接合のメカニズムを検討するため,種々の金属材料とPFAとの密着性について調べた。アンモニアプラズマ処理を施したPFAフィルム表面に種々の金属をスパッタ装置により製膜した。金属はCu, Al, Ag, Mg, Fe, Ni, Coを選択した。金属製膜したPFAフィルムとアンモニアプラズマ処理したPFAフィルムを熱プレスし,試料を作製した。CuおよびFeでは4 N/cmを超えるピール強度が得られた。一方,Al,Ag, Ni, Coではピール強度は1 N/cm以下であり密着強度が得られなかった。 剥離箇所を特定するためXPSによる表面分析をおこなった。その結果,次の3つの場合に分類できた。Case 1: 密着力大,樹脂の凝集破壊,Case 2: 密着力小,金属/樹脂界面剥離,Case 3: 密着力小,樹脂の凝集破壊。CuおよびFeはCase1に相当し,金属と樹脂の密着は良好である。Ag, Ni, CoはCase 2に相当し,金属と樹脂の接着力がないことを示している。Al, Mgに関してはCase 3に相当し,密着力が低いにもかかわらず樹脂内部の凝集破壊が破壊モードとなっていた。Cu,Feの場合から考えると樹脂自身の強度は4 N/cm程度であると考えられるが,Al,Mgの場合にはそれ以下で樹脂の凝集破壊が起こっている。このことから,金属の存在が樹脂強度の低下をもたらすことが考えられる。この項目に関しては引き続き検討をおこなう。
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今後の研究の推進方策 |
フッ素樹脂と金属の異種材料接着では銅が特異的に高い接着強度を示すことが明らかとなった。今後は接着剤を利用しない樹脂同士の直接接着技術の確立に注視する。具体的には次世代プリント基板材料として使用される低誘電損失樹脂をターゲットに,樹脂の表面改質をおこなう。具体的には以下の計画で実験を進めていく。 ①プラズマ照射とウェット手法を組み合わせた樹脂表面改質による高密度アミノ基導入条件を検討する。②各種低誘電損失樹脂フィルム材料(FEP,PFA,SPS,液晶ポリマーなど)をターゲットとする。③恒温恒湿試験,高温試験などの長期信頼性試験を実施する。
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