高効率な溶接であるダンデムガスメタルアーク溶接(GMAW)での溶込み形状が、アーク直下が深い異方的なフィンガー形状から、被溶接体を正弦波振動させることでなべ底型に変化させられることを初めて見出した。この観察を基に、その機構解明を本研究の目的としている。本研究では、市販Flow3Dソフトを使用するが、溶接条件や物性の入力は当然のことながら、特に表面表力の温度依存性を独自に組み込んだサブルーチンにて入力したシミュレーションが特徴である。被溶接体の正弦波振動にてマクロな溶け込み形状を変化させられたのは、振動により実効入熱が低くなった(実験事実)ことと、それにより表面張力の温度依存性の2階微分の変曲点(温度)を溶融池温度の範囲内に存在させたことでマランゴニ対流による溶融池内の物質と熱の流動がアーク直下方向のみに集中することなく、止端方向や一度アークより後ろに流れた後に前に戻ってくる対流などのバランスによる(シミュレーションからの示唆)と考えられることを示せた。シミュレーション結果から2Dおよび3Dの溶融池の温度分布や物質の流れのフロー図などと、再現した溶け込み形状を可視化したところが研究成果となる。本研究期間の最後では、振動周波数の変化が溶融池(温度分布)形状の変化に与える影響を可視化した。かつどの周波数が最も溶け込み形状変化に影響を及ぼしたかの指標として、熱影響部(HAZ)のある地点での溶接中の温度履歴を各周波数で図示し、最も低入熱となる周波数が変化させた周波数の中で得られた。その時の溶け込み形状が最も滑らかななべ底形状となっていたことを実験観察と再現シミュレーションで明らかにした。タンデムアーク溶接では、不均一で厚い高硬度と低硬度からなるHAZがフィンガー形状の溶け込み下に形成されるが、この周波数にてそのHAZ厚さを最も薄く均一に出来ることを明らかにした。
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