研究課題/領域番号 |
21K04679
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
酒井 哲也 日本大学, 生産工学部, 教授 (70376961)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プラスチック / 無機粒子 / ゼオライト / 分解 / 廃棄物処理 / リサイクル |
研究実績の概要 |
これまで、材料は使用環境に対応するための機能、性能、寿命が求められている。特にプラスチックはいわゆるオーバースペックゆえの環境への負荷が地球環境に多大な影響を与え問題となっている。したがって、環境に適合する材料は地球環境への対応ではなく、前述したような寿命を有するものを指すことが多い。 イオン交換機能を有したゼオライト無機粒子を、耐食用途に使用されている熱硬化性プラスチックに充填し耐食性向上効果を目指すだけでなく、むしろ“劣化促進”や海水などの中性塩水溶液環境において“崩壊・分解する”効果について検討する。したがって、この開発は環境によっては耐久性が劣る材料、すなわち環境不適合を利用し、廃棄物処理、リサイクルにつなげることを目的としている。 本研究では熱硬化性プラスチックに無機イオン交換体粒子を充填した複合材料を作製し、酸性およびアルカリ性さらに中性塩水溶液で浸せき試験を行い、無機イオン交換体の吸着・イオン交換体の化学反応を利用し、環境によって“耐食性の向上”もしくは“崩壊・分解”など、耐久性をコントロールできる複合材料の開発に関する基礎的研究を行う。耐酸性の不飽和ポリエステル樹脂と耐アルカリ性のアミン硬化エポキシ樹脂をマトリックスとし、それぞれに対し、無機系の陽イオンおよび陰イオン交換体ならびに天然ゼオライトを充填した試験片を作製する。これらを硫酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液および海水を想定した塩化ナトリウム水溶液にそれぞれを浸せきさせ、所定時間浸せき後、試験片の質量変化率、曲げ強度保持率を求め、劣化の程度を観察する。さらに、EDX分析によって,試験片に侵入した元素(例えば、NaOH水溶液であればNa)の深さを、顕微IRによって化学的劣化層の厚さなどを検討することで、各水溶液中における複合材料中のイオン交換体の効果を評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルカリ環境(水酸化ナトリウム水溶液中)のイオン交換機能を有するゼオライト充填不飽和ポリエステル樹脂の分解と挙動について検討した結果、ゼオライトの官能基が、分解速度及び抑制に影響を与えることを確認した。 酸性環境(硝酸水溶液中)のアミン硬化エポキシ樹脂のイオン交換機能を有するゼオライト充填アミン硬化エポキシ樹脂の分解と挙動について検討した結果、ゼオライトの官能基が、分解速度及び抑制に影響を与えることを確認した。 以上の結果から、酸、アルカリとイオン交換機能を有する無機粒子であるゼオライトをもちいることで、これまで得られた結果の確認とさらに新たな機能の発現をよそできる結果となったことから、おおむね順調に進展していると思われる。 ただ、自然環境に近い中性塩水溶液においての結果は不十分であるため今後検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
無機粒子を充填するマトリックスとなる不飽和ポリエステル樹脂、アミン硬化エポキシ樹脂に対して、温度、濃度を変化させたアルカリ水溶液および酸性水溶液において、引き続き分解挙動を検討する。これとともに、海水環境を想定した中性水溶液においての分解挙動について検討する。 さらに、これまでの結果から、イオン交換機能を有する無機粒子であるゼオライトはマトリックスである樹脂に様々な影響、例えば耐食性の向上、もしくは分解性の向上を誘引する役割を示していることから、生分解性プラスチックへの充填を計画している。この生分解性プラスチックを使用した試験片を作成するために、射出成型機の購入も予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度計画していた海外における成果発表が、COVID-19の影響で開催が中止もしくはオンライン開催になったために発表自体を延期したために生じた。令和4年度も影響は小さくなってきているものの海外への渡航等は厳しいものと考えている。また、これまでの研究成果より環境問題への対応として様々なところに使用されている生分解性プラスチックを母体とし、本研究で使用しているゼオライトを充填することで、本研究の目的を達成できることが大いに期待できる。したがって、令和4年度及び令和3年度の予算を生分解性プラスチックの成形器の購入に充当し、購入を計画している。
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