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2021 年度 実施状況報告書

アンカー型機能性分散剤によるカーボンナノチューブの分散,配向制御

研究課題

研究課題/領域番号 21K04682
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

川本 益揮  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70391927)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードカーボンナノチューブ / 分散 / 配向 / 複合化
研究実績の概要

本年度は,カーボンナノチューブを分散するためのアンカー型分散剤の合成と、カーボンナノチューブの分散性について検討した。その結果,アンカー型分散剤は特定の直径のナノチューブを選択的に分散する,新しい知見を見いだした。
カーボンナノチューブとのパイ―パイ相互作用を期待し,アンカー部位にペリレンジイミドを導入した。フェニル基をスペーサーとし,2つのペリレンジイミドが向かい合うように配置した,ピンセット分子の合成に成功した。
ピンセット分子は,テトラヒドロフラン,トルエン,クロロホルム等の有機溶媒に可溶であり,これらの溶媒に対するカーボンナノチューブの分散性を確認した。ピンセット分子は,テトラヒドロフラン中でカーボンナノチューブとのパイーパイ相互作用によって複合化し,ナノチューブが分散した。一方,クロロホルムを溶媒に用いた場合,ピンセット分子はカーボンナノチューブと複合化せず,ナノチューブは沈殿した。この溶媒に対する分散性の違いを利用し,分散したピンセット分子/カーボンナノチューブ複合体をクロロホルムで洗浄すると,複合体からピンセット分子が脱離し,カーボンナノチューブを単離することに成功した。
単離したカーボンナノチューブを界面活性剤で水に再分散し,蛍光スペクトルを測定した。その結果,ピンセット分子は,直径がおよそ 0.9 nm のカーボンナノチューブを効率よく分散できることがわかった。このことは,ピンセット分子を構成する 2 つのペリレンジイミドの分子配置と分子間距離が重要な役割を果たしていると考えることができる。
以上の結果より,アンカー型分散剤は,様々な直径を含むカーボンナノチューブの混合物から特定サイズのナノチューブを選択的に分散することが可能な機能性材料であることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目標であった,アンカー型分散剤の合成とカーボンナノチューブに対する分散性を評価することができた。結果として,カーボンナノチューブの溶媒への分散化だけでなく,ナノチューブの直径選択分散という新しい機能を見出すことに成功した。カーボンナノチューブの直径選択分散は予期しない研究成果であり,アンカー型分散剤が「分子ふるい」として機能する新しい材料であることを示している。

今後の研究の推進方策

引き続き,アンカー型分散剤を用いたカーボンナノチューブの分散と配向を検討する。
分散については,蛍光分光光度計を用い,アンカー型分散剤の濃度とカーボンナノチューブの直径選択性との相関関係を明らかにする。また,分子動力学シミュレーションからアンカー型分散剤とカーボンナノチューブの結合自由エネルギーを同定し,分散剤の構造がナノチューブの分散安定性に及ぼす影響を明確にする。
配向については,分散したナノチューブからなるフィルムを塗布によって作製し,偏光顕微鏡で光学的な異方性を評価する。また,一次元構造体であるカーボンナノチューブが異方的な配向を示す場合,電気的な異方性示す可能性がある。ナノチューブの配向方向に対して平行あるいは垂直方向の電気伝導度を4 端針法で測定する。

次年度使用額が生じた理由

学会発表がオンライン開催となり,旅費を必要としなかったため。また,選定した設備備品の費用が当初に比べて安価となり,次年度使用額を生じた。
カーボンナノチューブの配向性を確認するための装備の購入に充てる。また,課題遂行中に新しい知見を得たナノチューブの直径選択分散性に関する研究を推進するための装置の購入を進める。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Noncovalent functionalization of single-walled carbon nanotubes with a photocleavable polythiophene derivative2022

    • 著者名/発表者名
      Muralidhar Jyorthana Rajappa、Kodama Koichi、Hirose Takuji、Ito Yoshihiro、Kawamoto Masuki
    • 雑誌名

      Nanomaterials

      巻: 12 ページ: 52~52

    • DOI

      10.3390/nano12010052

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Photocleavage behavior of a polythiophene derivative containing a coumarin unit2022

    • 著者名/発表者名
      Muralidhar Jyorthana Rajappa、Kodama Koichi、Hirose Takuji、Ito Yoshihiro、Kawamoto Masuki
    • 雑誌名

      Polymer Journal

      巻: 54 ページ: 191~198

    • DOI

      10.1038/s41428-021-00574-z

    • 査読あり
  • [学会発表] Solution-processable free-standing thermoelectric films using thermally cleavable polythiophene derivatives2021

    • 著者名/発表者名
      Masuki Kawamoto, Pan He, Satoshi Shimano, Krishnachary Salikolimi, Takashi Isoshima, Yohei Kakefuda, Takao Mori, Yasujiro Taguchi, and Yoshihiro Ito
    • 学会等名
      The 38th International Conference of Photopolymer Science and Technology (ICPST-38)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Aqueous exfoliation of graphite using cationic polymer dispersants for graphene hydrogels2021

    • 著者名/発表者名
      Ahmed El-Refaey, Koichi Kodama, Takuji Hirose, Yoshihiro Ito, and Masuki Kawamoto
    • 学会等名
      第70回高分子討論会
  • [学会発表] Diameter-selective dispersion of single-walled carbon nanotubes using perylene-based tweezer-like materials2021

    • 著者名/発表者名
      Ahmed El-Refaey, Koichi Kodama, Takuji Hirose, Yoshihiro Ito, and Masuki Kawamoto
    • 学会等名
      第31回日本MRS年次大会

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公開日: 2022-12-28  

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