研究実績の概要 |
ヘテロ凝固核理論の適用および液体急冷法を用いることで, ネオジム磁石を凌駕するSmFe12バルク磁性材料の創製を目指した. 初めに, Fe-7.7mol%Sm合金を用いて液体急冷を行い, ロール速度による影響を調査し, SmFe12相形成に必要な急冷条件を検討した. 次に, ヘテロ凝固核としてバナジウムを用い, 得られた急冷条件にて液体急冷を行い, バナジウムの添加がFe-7.7mol%Sm合金に及ぼす影響を調査した. また, 作製した急冷薄帯に様々な条件で熱処理を実施し, バナジウムの添加が熱処理後の材料に及ぼす影響を調査した. さらに, 熱処理前後の試料の磁気測定を行い, バナジウム添加による影響を様々な観点から調査した. 液体急冷において, ロール速度60 m/s以上の場合, アモルファス化したFe-7.7mol%Sm合金を得ることができた. また, ロール速度の向上に伴い, 作製される急冷薄帯の厚さが減少し, 冷却速度が上昇する一方, ロールから剥離した後の冷却温度が上昇した. 作製される急冷薄帯の厚さ, ロールから剥離した後の温度, α-Fe晶出温度を通過する際の冷却速度の観点から, ロール速度は80 m/sが最適であると考えられる.推定したα-Fe相およびSmFe12相のCCT図より, 臨界冷却速度はそれぞれ約5×106~7×106 ℃/s, 約1×107 ℃/sであることが分かった.バナジウムの添加した場合, 溶融した母合金が凝固する際の核としての機能は期待できない. しかし, 母合金中に分散させることでアモルファス化および, 熱処理における結晶相析出の抑制において有効であることが分かった.バナジウムを添加した場合, 550℃で熱処理を行うことで, α-Feの析出量を急増させるため, 飽和磁化および保磁力の増加に寄与することが分かった.
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