研究課題/領域番号 |
21K04690
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松口 正信 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (50190434)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水素ガスセンサー / 常温作動 / ポリアニリン / 二層構造 / 耐湿度 / 水素社会 |
研究実績の概要 |
本研究では、柔軟なフィルム上に導電性高分子であるポリアニリン(PANI)グラフト鎖を成長させ、さらに疎水性高分子をPANIPに共重合させた二層構造を有する検知膜を作製することで、湿度の影響を受けない常温作動かつフレキシブルな常温作動型水素ガスセンサーの開発を目指す。 本年度は、二層構造を有する検知膜の作製条件を決定することを主な目標として、フレキシブル基板の代わりに、あらかじめ金の櫛型電極を焼き付けたアルミナ基板を用いた検討を行った。まず、基板上にポリドーパミン(PD)をコーティングし、パラフェニレンジアミンと反応させた後、塩酸中で酸化重合を行うことにより、PANIをグラフト重合させた。次に、ポリアニリン末端にメタクリル酸グリシジル(GMA)を反応させて導入した。最後に疎水性高分子としてポリスチレン(PS)を選択し、ラジカル重合によりGMA末端のメタクリレート基とスチレンモノマーを反応させた。これらの各反応プロセスにおいて、FT-IR測定や水接触角測定を行い、目的の反応が進行していることを確認した。以上のように、本年度中に、二層構造を有する検知膜の作製への道筋を付けることができた。 なお、本年度は、水素ガス検知システムの立上げも行ったが、まずは研究室に既存のアンモニアガス検知システムを用いて作製したガス検知膜の評価を行った。PANIをグラフトさせたセンサでは大きなガス応答が得られたが、GMAを導入した後ではセンサ応答が減少し、PSを導入した後では回復率が低下するなど、二層構造としたことによるセンサ特性への影響を確認し、これらの特性の改善へ向けた取組を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、水素ガス検知システムの立上げと、ポリアニリン(PANI)グラフト鎖とポリスチレンを共重合させた二層構造を有する検知膜の作製を行った。 水素ガス検知システムの立上げでは、共存水蒸気の影響を調べることのできる装置のセットアップが完了した。 検知膜の作製においては、作製方法や反応条件を最適化することで、くし型電極上に二層構造を有する検知膜を作製することに成功した。また、作製した検知膜のそのキャラクタリゼーションを行った。作製したガス検知膜は、室温でアンモニアガスに対して大きな応答を有することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
立ち上げた水素ガス検知システムを用いて、作製したポリアニリン(PANI)グラフト鎖とポリスチレンを共重合させた二層構造を有する検知膜の水素ガス応答特性を調べる。特に、初年度のアンモニアガスを用いた検討で明らかとなった、二層構造にすることによるセンサ特性の劣化がアンモニガス検知において特有のものか、より分子の小さな水素ガスの検知の場合でも起きるのかを調べ、その改善を図る。 本研究の重要な目的である、水素ガス応答に対する湿度の影響についても調査を開始する。疎水性高分子としては、まず本年度作製に成功したポリスチレンを用いたセンサについて調べるが、順次ポリスチレン以外の高分子を用いた二層構造を有する検知膜の作製にも挑戦する。 最終的には、水素ガス検知特性や湿度の影響を調べた結果を総合的に判断して、もっともすぐれた水素ガス検知特性を示した二層構造を有する検知膜をPETフィルムなどの柔軟な基板上に構築する条件を見出す。同時に、電極の配置の影響についても検討を行う。
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