研究課題/領域番号 |
21K04691
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
向井 理 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 特任教員(助教) (10549851)
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研究分担者 |
丸尾 昭二 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (00314047)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 3Dプリンター / 可逆的付加開裂連鎖移動 / 相分離 / 重合誘起ミクロ相分離 / 導電性高分子 / マルチマテリアル造形 / 3Dフレキシブル配線 / 光造形 |
研究実績の概要 |
本研究テーマ「高分子精密設計に基づく光造形物の階層構造制御」では、研究目的として高分子精密設計法の一つである可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法を用いて造形物のレオロジー特性や機械特性などの材料物性を階層構造を制御することにより自在に操作可能な新規光造形法の構築を目指している。本研究を実施するにあたり、光造形に一般的に用いられる樹脂である エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR499)および高分子末端にRAFT剤を有するマクロ連鎖移動剤(macro-CTA)を合成し光造形用樹脂として造形を試みた。その結果、重合誘起ミクロ相分離(PIMS)により相分離構造が誘起されることや、レーザー走査速度により造形物中の相分離構造の変化により光学特性ならびに力学特性が変化することが明らかになった。さらに、走査速度を変えながら造形を行なったところミクロな相分離構造とマクロなヘテロ構造を併せ持つ階層構造を有する造形物(マルチマテリアル造形)を単一の材料から作成することに成功した。また、PIMSにより連続相を有する導電性樹脂を含む光造形用樹脂の開発に成功し、柔軟性と高い導電性を併せ持つ3Dフレキシブル配線の造形に成功した。このような導電性を有する光造形用樹脂は、その多くが10の-2乗 S/cm以下であったが本研究では16 S/cmと100以上の導電性を実現することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究テーマ「高分子精密設計に基づく光造形物の階層構造制御」では、研究目的として造形物のレオロジー特性や機械特性などの材料物性を自在に操作可能な新規光造形法の構築を目指している。それに対して、今年度の成果は造形時のレーザー走査速度により造形物中の相分離構造の変化により光学特性ならびに力学特性が変化することを明らかにしており材料物性を制御できることを実証している。さらにアプリケーションとして、上記研究で得られたPIMSに基づく相分離構造の形成により、高い導電性と柔軟性を併せ持つ3Dフレキシブル配線が造形可能な導電性樹脂の開発に成功しており、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、比較的シンプルなジブロックポリマー状のmacro-CTA材を合成し「高分子精密設計に基づく光造形物の階層構造制御」の実証を試みた。上記のように、研究目的である造形物のレオロジー特性や機械特性などの材料物性を自在に操作可能な新規光造形法の構築法についてある程度実証の見込みができたことから、造形物の更なる機能化を目指す。具体的には、比較的シンプルなジブロックポリマー状のmacro-CTA材からより複雑なスターポリマー、ハイパーブランチポリマー、グラフトポリマーなどを用いて高分子ネットワークの制御を試みる。また、より高精細な造形が可能である2光子造形法についても検討する予定である。さらには、ゲル内部に機能性分子を複合化し機能性の高いゲルの創成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注業者のミスにより、発注がかけられておらず3月末日までに納品が間に合わなかったため。
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