研究課題/領域番号 |
21K04692
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡邊 源規 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (60700276)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光触媒 / 水分解 / 色素増感 / 可視光 / ナノシート |
研究実績の概要 |
本年度はナノシートとしてRhをドープしたカルシウムニオベート(Rh-KCa2Nb3O10)に焦点を当て、その合成と色素の合成を行った。 ピリジル基を有するボロンジピロメテン(BODIPY)にアルキル基を導入した色素を合成し、ピリジル基をヨウ化メチルで処理しカチオン化した。この色素を用いてフッ素部分をアルキル基置換した色素に、既報に従って合成したRh-KCa2Nb3O10を加えて超音波処理をしたところ、Rh-KCa2Nb3O10の着色と分散が確認できた。AFM測定からRh-KCa2Nb3O10は10層程度が重なっていることから、完全なナノシート化ができていないことが確認された。これは色素のかさ高さにより、ピリジニウムカチオンがRh-KCa2Nb3O10に接着する点が減少したことや層間挿入に十分ではないこと、またアルキル鎖の長さが十分でなくナノシート化した形態を保てないことが理由として考えられる。 得られた色素担持Rh-KCa2Nb3O10を用いて犠牲剤存在化、可視光照射をしたところ、水素の発生が確認でき、水分解反応が進行していることが分かった。これはRh未ドープKCa2Nb3O10と比べて活性が高かったことから、Rhを水素還元反応点とした活性の向上が行われているものと考えられる。今後はTEMなどを含めた構造の解析を行う。 今年度の結果では、BODIPY色素はカルシウムニオベートに吸着できるものの、完全にナノシート化できないことが明らかとなった。次年度はより剛直な色素の検討と、BODIPY骨格にさらなるアルキル基を導入した分散能を高める構造を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の予定通り色素の合成とナノシートの合成が進行しており、今後の進捗により目的とする色素増感能を有した剥離剤の分子設計指針が得られると期待されるため。
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今後の研究の推進方策 |
ナノシート部分の変更 現状はカルシウムニオベートに焦点を当てている。触媒活性の向上のため、Rhサイトの還元能を利用して白金やニッケルで被覆し電荷逆反応をを防いだものを検討する。また、カルシウムニオベ―トは伝導帯準位が高く、色素の選択性が限られることが分かったので、酸化チタンシートやC3N4ナノシートなどのナノシート材料についても検討する。 色素の検討 今年度の結果では、BODIPY色素はカルシウムニオベートに吸着できるものの、完全にナノシート化できないことが明らかとなった。BODIPY骨格にさらなるアルキル基を導入した分散能を高める構造を検討する。具体的には、これまで単鎖のアルキル基を導入していたが分散能を向上させるために枝分かれした構造のアルキル基を導入する。また、BODIPY骨格のボロンーフッ素部位のフッ素は、アルキル基等への変換が可能であり、変換時にBODIPY骨格の酸化還元電位はほとんど変わらないことが分かっている。フッ素部位にアルキル基を導入することでアルキル鎖の導入部位を増やし、ナノシート化した際の安定化を狙う。 BODIPY以外の色素としてポルフィリン色素についても検討する。ポルフィリン色素は末端をカチオン化可能な置換基を導入可能であることが知られている。さらに、ポルフィリンはカチオン体が無機半導体に吸着することも知られている。ポルフィリンをオリゴマーまたはマクロサイクル化した色素の合成を検討し、置換基をカチオン化することでかさ高い構造を有するポルフィリンカチオン体を開発する。ポルフィリンカチオン体を剥離剤として用いてカルシウムニオベート等に分散させることで、色素担持によるナノシートを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
テクニカルスタッフの雇用と海外共同研究の渡航を予定したが、COVIDの影響でテクニカルスタッフの長期雇用が遂行できず、短期の雇用による研究遂行の代替で行った。海外共同研究のための渡航は今年度継続して行う予定である。
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