最終年度は開発した色素をナノシートに担持することで、光触媒活性の評価を行った。合成したBODIPYカチオン体をエタノール溶液に溶かし、TBAOHにより分離したHCa2Nb3O10ナノシートを加えナノシートに色素を担持した。色素担持ナノシートでは、500-800 nmに新たな吸収ピークが観測されたことから、層状化合物の上に色素が担持できたことが分かった。また、担持反応中では、、色素が分解しないことも吸収スペクトルの結果から分かった。XRDでは(0 0 1)のピークが弱くなり、低角シフトしたことが観測され、ニオブ層状化合物がまだ単層のままであることが示唆された。以上のことから、色素が単層ニオブ層状化合物に担持できたことが考えられる。 全光照射下、メタノールを犠牲剤として光水分解反応を行った。水素の発生を観測したが、色素を担持したナノシートは、色素未担持ナノシートに比べて水素生成効率がかなり低いことも観測された。色素構造はは疎水性基 (-OC12H25)を有するので、水の接触確率が減少したためと考えられる。さらに、反応後、青色の色素担持ナノシートはは白色に変色したことも観測され、色素が分解したことが分かった。 色素の光安定性を調べるため、光を当てながら、UV-Visスペクトル測定を行った。全光或いは可視光(>420 nm)照射下、エタノール溶液或いはTHF溶液の状態下で、光の照射により、664nmのピークが減少し、592nmに新たなピークが現れた。その後、光を続けて照射すると、592nmのピークが減少し、509nmに新たなピークが現れた。これは色素の構造が2段階の反応を経て分解していることを示している。 これらの結果から、色素担持による光水分解に成功したものの、色素の構造による水分子の接触の困難さから水分解活性が低いこと、または色素の光安定性により水分解活性が減少したことが示唆された。
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