研究課題/領域番号 |
21K04694
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
駒崎 慎一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (70315646)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水素 / クリープ / 低サイクル疲労 / 欠陥 / 非破壊評価 / 余寿命評価 / 水素昇温脱離分析 |
研究実績の概要 |
水素による損傷検出のメカニズム(水素と損傷との相互作用)を明らかにするために,実用8Cr鋼を対象に,平面曲げ疲労試験(室温,大気中,ひずみ範囲:1.0%,2.0%,疲労寿命比:0.1%,1%,10%,30%,100%)と冷間圧延(室温,圧下率:22%,60%)を実施し,新たに種々の損傷付与材を作製した. 各損傷付与材の表面き裂の発生状況を観察するとともにビッカース硬さを測定した.その後,各損傷付与材から微小板状サンプルを採取し,水素チャージ後に昇温加熱機構付きガスクロマトグラフを用いて水素放出曲線を測定した. 水素放出特性(水素放出曲線のピーク高さとピーク温度,放出水素量)は損傷付与条件(ひずみ範囲,疲労寿命比,圧下率)に応じて異なるだけでなく,水素放出曲線1回目と2回目の測定結果の間でも明瞭な差異が認められた.このような水素放出特性変化の要因を明らかにするための一環として,測定された水素放出曲線をガウス関数を用いてフィッティングし,水素放出ピークの分離を試みた.その結果,いずれの損傷付与材も「転位」,「析出物」,「粒界」,「空孔」,「空孔クラスター」に関係していると思われる5つの水素放出ピークに分離することができた.詳細な検討や検証は今後の課題ではあるが,「空孔」および「空孔クラスター」に起因していると思われる水素の放出量が疲労損傷の進行(疲労寿命の消費)とともに単調に増加していく傾向が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素による損傷検出のメカニズム(水素と損傷との相互作用)を明らかにするために,実用8Cr鋼を対象に,平面曲げ疲労試験(室温,大気中,ひずみ範囲:1.0%,2.0%,疲労寿命比:0.1%,1%,10%,30%,100%)と冷間圧延(室温,圧下率:22%,60%)を実施し,種々の損傷度を有する様々な損傷付与材を作製することができた.また,それらの水素放出特性を測定・解析し,“水素”と“欠陥・損傷”との相互作用を議論するための基礎データを取得することができた.
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今後の研究の推進方策 |
分離した5つのピークとミクロ組織,欠陥,損傷との対応付けを行うとともに,他の材料や損傷に対しても同様な解析が可能か否かを検討する.加えて,計画書のとおり,陽電子消滅分光法や階層的3D/4D解析法,高分解能TEM,計算科学的手法などを用いたミクロ組織,欠陥,損傷の定量化を進める.
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