研究課題/領域番号 |
21K04695
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
中川 鉄水 琉球大学, 理学部, 助教 (50647261)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イオン液体 / アンモニアボラン / NMR / 共晶融解 / イオン交換反応 |
研究実績の概要 |
アンモニアボラン(AB:NH3BH3)は高水素密度だが、水素放出速度が遅く、アンモニアなどの不純物を放出する。われわれはこの解決策として、ABにイオン液体(IL、例:[Bmim+][Cl-])と金属水素化物(MH)を混合し、高速で水素を放出することに成功した。この反応過程では、[Li+][NH2BH3-] (LiAB)が生成した後に、 [Bmim+ ][NH2BH3-]のようなイオン液体アミドボラン(ILAB)を生成することが示唆された。本研究では、ILABの存在を証明した上で、単離を試みその基礎物性を明らかにすることを目的とする。初年度はILABの存在を証明することを目的とした。 LiABとILの反応によるILABの合成を試みた。ILABは室温で分解する可能性があるため、5 ℃以下で合成を試みた。副生成物を分離するために、数種類の有機溶媒中で反応させろ過を行い、ろ液について溶液NMR測定を行った。また、ILABは室温で液体と思われるので、溶媒を使わず冷却しながらNMR測定を行った。 溶媒が無い場合の11B-NMRでは、混合後の物質はLiABに比べて高磁場側にシフトした。1H、13C-NMRではILのピーク位置がわずかにシフトし、LiABの3.6ppmのN-H結合ピークが消失し、4.2ppmのピークが成長したため、N-H結合の形態が変わったと考えられる。アセトニトリル中やテトラヒドロフラン中で混合するとLiABまたはILが溶媒に溶解せず反応が進まなかった。ジクロロメタン中では溶媒の無い場合と同様の結果が得られた。しかしILの陰イオンをClからIに変えるとIL骨格のピーク位置が異なったため、LiAB-ILの共晶融解物を観測している可能性が残った。そのため、ILABの存在を確定させるためには、溶媒やイオンの最適化や他の合成法によってILABを単相で得る必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ILABの溶媒に対する溶解度が不明であるため、ILとLiAB反応後の物質から副生成物の金属塩を分離する溶媒が選定できていない。また、LiABが終売となり、保存が難しいので都度自作することで時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
①最適な分離溶媒を決定する、②イオン液体のClを他のイオンに変える、③LiABのLiを他の金属イオンに変更する、④その他の合成法を採用することでILABの単離方法を確立する。 単離した場合、融点と分解(水素放出)温度を明らかにし、最適な保存環境を把握する。その後、分解しない温度条件下でIRやラマン散乱測定などを用いてILABの構造特性を明らかにする。
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