研究課題/領域番号 |
21K04697
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
石井 淳一 東邦大学, 理学部, 准教授 (30585930)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ビス(o-アミノフェノール) / ジカルボン酸クロリド / ポリヒドロキシアミド(PHA) / 溶液加工性生 / ポリベンゾオキサゾール(PBO) / ポリイミド(PI) / 低熱膨張性(低線熱膨張係数CTE) / 低誘電正接(低Df) |
研究実績の概要 |
前年度は優れた誘電特性が期待できるポリベンゾオキサゾール(PBO)フィルムの低熱膨張化を検討し、線熱膨張係数(CTE)として32.0~33.5ppm/Kを達成した。そして、そのPBOの前駆体であるポリヒドロキシアミド(PHA)のアミド溶媒に対する溶解性も維持できた。2023年度はPHAの溶媒溶解性を維持しつつ、PBOフィルムのさらなる低CTE化を目指してジカルボン酸クロリドモノマーの改良を試みた。そのモノマーの特徴は化学構造が非対称であり嵩高い置換基も導入されている点にある。このモノマーと汎用4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシビフェニルから得られるPHAはアミド溶媒に溶解性を示し、そのPHA溶液から製膜したPBOフィルムのCTEは25.8ppm/Kにまで低減できた。今後、PBOフィルムの機械的特性を把握したうえで、10GHzにおける誘電正接(Df)を測定する予定である。一方、ポリイミド(PI)系の材料についても並行し検討を進めた。PIモノマーであるジアミンに着目し、エステル結合と無極性置換基を系統的に導入した一連のジアミンモノマーを合成した。それらのモノマーは汎用4,4'-ビフタル酸無水物と重合しPIフィルムに誘導した。得られたPIフィルム中で、10 GHzのDfが前年度までに達成していたDf=0.00299(誘電率Dk=3.27)よりも低いDf=0.00286(Dk=2.95)を示す組成があった。これはPIの繰り返し構造単位中のイミド基濃度低減と置換基による効果と考えられる。このPIの他の膜物性は、吸水率0.78%、引張弾性率8.10GPa、最大破断伸度5.0%、窒素下5%重量減少温度468℃、室温から分解温度までに明瞭なガラス転移温度は示さず、100~200℃の平均CTEは4.8ppm/Kと優れた寸法安定性をも有していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年目は、高周波数帯域における優れた誘電特性が期待できるポリベンゾオキサゾール(PBO)フィルムについて、新たなジカルボン酸クロリドモノマーの合成に成功し、その効果(溶液加工性と低熱膨張性)を確認した。また、同時に検討していたポリイミド(PI)系についても、目標の低比誘電率(低Dk 2.5 以下)と低誘電正接(低Df 0.001以下@10 GHz)に近づけることができ、これまでの2年間の知見の発展形が有効であることがわかった。よって、この検討方針に従い今後も引き続き継続できると考えた。以上のことから申請当初の研究計画に対して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請当初の計画通り、低誘電正接(低Df)化の制御因子について調査を継続する。具体的には、4年目は低Df化に効果のあった化学構造に対して、熱分析などを用いてガラス状態における高分子主鎖中の局所運動とDfの関係について精査し、低Df化に対する制御因子を解明していく。また、これまで合成したPBOまたはPIの分子設計指針をさらに発展させて低Df化を目指すとともに、その他の特性(加工性、低熱膨張性、耐熱性、機械特性、難燃性)をも満足する「5G用絶縁材料の開発」につなげていく。
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