研究課題/領域番号 |
21K04707
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川又 透 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90638355)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | FeGa合金 / 逆磁歪 / 磁歪 / エネルギーハーベスティング |
研究実績の概要 |
前年度開発した, Ga電析メッキ及びアニーリングの手法を用いて0-25at%のGa浸透電磁鋼板試料を作製し, 電磁鋼板試料中のGa濃度と, 磁歪量および発電量の相関を詳細に調査した。単結晶FeGaで報告された傾向と同様に磁歪量及び発電量は, ともに Ga18 at%近傍で最大量を示すことが確認された。ガリウム濃度が大きくなることに伴い加熱時に板状合金試料に生じる変形(反り)は,適切な強度の板バネで試料を挟み、固定することによって防止することが可能であった。マクロスケールでの結晶配向性および力学的特性を評価するため, X線極点図測定および弾性率測定を実施した。極点図測定の結果, Ga拡散のための熱処理後もGOSS方位の集積は保たれており,また弾性率測定の結果<100>方向の弾性率はGa添加によって著しく低下することが明らかとなった。すなわち本手法によって作製されたGa浸透電磁鋼板試料は, マクロスケールにおいてもFeGa単結晶合金と同様に<100>方向の磁気異方性を示すことが確認された。来年度はスパッタリングおよび電析メッキを用いた第三元素添加によるGa浸透電磁鋼板試料の磁歪および逆磁歪特性の向上を計る。また結晶方位の集積程度と磁歪および発電性能の相関を検討するため、Gaを浸透させた無方向性電磁鋼板試料およびCZ法によって作製された単結晶Fe-Ga-Si合金との比較を実施する計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ga電析メッキおよびアニーリングにより, 0-25at%のGa浸透電磁鋼板試料を作製することが可能となった. Ga浸透電磁鋼板試料中のGa濃度と磁歪量および弾性率の関係はFeGa単結晶合金に類似しGa18at%近傍で最大量を示すことが明らかとなったことから, 目標とする合金組成を明確に設定することができた. これらの0-25at%Ga浸透電磁鋼板のマクロスケールでの結晶配向性および力学的特性の評価を実施し, 加熱後およびGa浸透後も材料のGOSS方位は保たれており, 逆磁歪式振動発電に適した磁気および力学的特性を有していることが確認できた。電磁鋼板試料中で元素拡散のための熱処理後も結晶方位が保持されていることから, 本手法は通常の溶融-凝固プロセスでは作製が困難である三元素を添加したFeGa合金など, 新たな磁歪および逆磁歪材料の製法として有用であることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、元素拡散による電磁鋼板試料の磁気特性改質プロセスを発展させるため第三元素(La, Sn, Pb)添加によるFeGaSi-X合金の作製および材料特性評価を計画している。また結晶方位の集積程度と磁歪および発電性能の相関を検討するため、無方向性電磁鋼板試料および単結晶Fe-Ga-Si合金との比較を実施する計画である。当初計画していた磁区構造観察は, 想定よりも電磁鋼板試料表面の残留応力が大きいために難航しているが, 研磨手法の改善熱処理温度および時間の調整により状況の改善を見込んでいる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Ga合金試料の作製が当初の計画よりも順調であったため, 消耗品(金属ガリウム, アルゴンガス等)の支出が想定よりも少なかったため次年度使用額を生じた。次年度の計画に沿い、論文投稿費及び校閲費として適切に使用する計画である。
|