研究実績の概要 |
Fe-Ga単結晶合金の磁歪特性が希土類元素の添加によって向上する点に着目し, Ga浸透電磁鋼板試料の磁歪および逆磁歪特性を向上させるため, スパッタリングおよび溶体化処理を用いた第三元素(Gd)添加を実施した. マグネトロンスパッタリングにより Ga 浸透電磁鋼板試料表面にGd 薄膜を作製し, 800℃ 96時間のアニーリングを施して試料中の Gd濃度が 0.5 at% となるよう溶体化処理を行った. Gdを添加したGa浸透電磁鋼板は, Gd未添加の試料に対して大きな磁歪量, 透磁率および飽和磁化の値を示した. さらにこれらの試料を用いた振動発電試験において, Gd添加およびGd未添加試料の共振周波数はほぼ同様であったが, Gd添加試料はGd未添加試料に対しておよそ1.5倍の発生電圧を示すことが明らかとなった. すなわち Ga浸透電磁鋼板試料へのGd添加によって力学的特性を保持したまま, 軟磁気特性および逆磁歪特性を向上させることが可能であることを明らかにした. また結晶方位の集積程度と磁歪および発電性能の相関を評価するため、Gaを浸透させた方向性および無方向性電磁鋼板試料の比較を実施した. 作製したGa添加電磁鋼板の磁歪および振動発電における発電量の向上程度はテンプレート材が方向性/無方向性の場合で異なり,方向性電磁鋼板にGaを添加した場合は磁歪,発電量が大きく向上した.無方向性電磁鋼板にGaを添加した場合は方向性電磁鋼板に比べて磁歪,発電量の向上は小さかった.以上の結果から,方向性電磁鋼板に適切な条件でGaを浸透させることにより振動発電に適した逆磁歪素子の作製が可能であることが示された.また,Fe-Ga(-Si)合金を用いた逆磁歪式振動発電においては磁化容易軸<110>を長手方向に集積した材料を使用することが肝要であることが示唆された.
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