研究課題/領域番号 |
21K04708
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
西川 雅美 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20622393)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エキシマレーザ / 窒化 |
研究実績の概要 |
光電極のエネルギー変換効率向上のための電子と正孔を空間的に分離する電位ステップ構造を形成することを目的に、酸化物層に窒化物を積層可能とする窒化物の低温成膜プロセスを検討した。その結果、水素と窒素の混合プラズマ中においてエキシマレーザを前駆体膜に照射するプロセスを用いると、低温でも窒素が導入されることを見出した。 具体的に、前駆体膜として、金属のカルボン酸塩と金属膜の2種類を用いた。まず、窒素の単独プラズマ中でエキシマレーザを照射した場合は、前駆体膜として金属カルボン酸塩を用いると、ほとんど窒素は導入されずに、酸化物が形成した。一方で、水素と窒素の混合プラズマを用いると、酸化物が形成されるものの、窒素が導入された窒素ドープ酸化物が低温で作製できることを明らかにした。さらに、ドープされた窒素種は、置換型と侵入型の2種類存在することがわかった。 次に、金属膜を用いた場合、窒素の単独プラズマ中においても窒素が導入されるが、水素と窒素の混合プラズマを用いると、さらに窒素の導入量が増加することが明らかになった。この窒素は金属の格子間に侵入することで導入されていることがわかった。 また、水素と窒素の混合ガス中(プラズマなし)でエキシマレーザ照射した場合では、金属カルボン酸塩および金属膜のどちらの前駆体膜にも窒素は導入されなかった。以上から、水素と窒素の混合プラズマ中でエキシマレーザ照射すると窒素の導入量が増加するのは、水素による還元作用に加えて、NHラジカル種が窒素の導入に寄与しているためと考察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで窒素プラズマ中で前駆体膜にエキシマレーザ照射することで低温でも窒素が導入されることがわかっていたが、新たに、プラズマ雰囲気に水素を添加することで窒素の導入量が増加することが明らかになった。これまでエキシマレーザの照射条件(フルエンス、照射時間)が窒素の導入量に影響する因子であるものの、最適条件にしても窒素の導入量には上限があった。そこで、プラズマ雰囲気に水素を添加するで、その上限値を更新することに成功した。また、前駆体として金属膜を用いると、金属カルボン酸塩を用いた場合と比べて、より多くの窒素が導入されやすいが、化学量論組成の窒化物の形成には至っていない。そこで、窒化物を形成させるためには、より多くの窒素を導入する必要があるため、さらなるプロセスの改善と窒素を導入するうえで重要な因子を調査していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
窒素導入量を増加させるために、まずは、窒素を導入するために重要な因子を明らかにする。特にエキシマレーザ照射条件等のプロセス因子については調べてきたものの、材料の持つ特性(結晶構造、組成等)と窒素導入量との関係について明らかになっていない。これまで、用いる前駆体膜の金属膜の種類によって、窒素導入量に違いがあることはわかっている。そこで、さらに様々な種類の金属膜を用いて、水素と窒素の混合プラズマ中におけるエキシマレーザ照射を行い、窒素導入量について検討し、窒素を導入するために重要な材料の特性を調査する。 同時に、窒化物膜を作製を目指して、プロセスの改善を実施する。具体的には、前駆体膜に窒素源の導入、エキシマレーザ以外の光源を用いた光反応(深UV光と赤外光)を利用したプロセスを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度では4種類の金属膜を購入し、これらの金属膜を用いて、材料の特性と窒素の導入量との相関を明らかにしていく。その結果を踏まえ、R4年度の予算と合わせて、新たに金属膜を購入し、結果の検証を行う。
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