研究課題/領域番号 |
21K04710
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田代 真一 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (70432424)
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研究分担者 |
湯地 敏史 宮崎大学, 教育学部, 教授 (80418988)
野村 和史 大阪大学, 大学院工学研究科, 講師 (90397729)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プラズマ溶接 / ミグ溶接 / キーホール / アーク間干渉 / 分光計測 |
研究実績の概要 |
本申請課題では厚鋼板の低入熱1パス溶接実現に向けた高性能プラズマミグハイブリッド溶接法を開発する。本溶接法ではプラズマアークとミグアーク間に電磁的な干渉が生じ、これがキーホール安定性及び溶融池形成に強い影響を及ぼす。そこで理論・実験の両面から当該現象の定量的解析を行い、その影響と原理を解明することを目的としている。また、溶接品質向上のため外部磁場を用いたアーク間干渉の制御技術の開発についても併せて行う。 2022年度は主に数値シミュレーションを通じて、プラズマアークとミグアーク間に電磁的な干渉が発生するメカニズム、及びこれがキーホール安定性及び溶融池形成に及ぼす影響とその原理の解明を行った。 アーク間の電磁的な干渉は、アークからもたらされる圧力や運動量、質量、入熱等の分布を時間的に大きく変貌させ、アーク・キーホール・溶融池の熱的・力学的相互作用に決定的な影響を与え、キーホール安定性や溶融池形成を支配するものと考えられる。 プラズマミグハイブリッド溶接の数値シミュレーションモデルを開発し、これを用いて溶融池内の熱輸送プロセスを検討した結果、主にプラズマ溶接とミグ溶接のプラズマ流が引き起こすせん断力により、溶融池には複数の大規模な渦が形成されることがわかった。特にミグ溶接にパルス電流を用いた場合、アーク間干渉の影響が小さくなることから、ミグワイヤから溶融池へともたらされる高温の溶滴はキーホール背後の渦に移行し、移流により母材裏面側へと輸送され、溶込みを大幅に増加させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は主に数値シミュレーションを通じて、プラズマアークとミグアーク間に電磁的な干渉が発生するメカニズム、及びこれがキーホール安定性及び溶融池形成に及ぼす影響とその原理の解明を行った。 アーク間の電磁的な干渉は、アークからもたらされる圧力や運動量、質量、入熱等の分布を時間的に大きく変貌させ、アーク・キーホール・溶融池の熱的・力学的相互作用に決定的な影響を与え、キーホール安定性や溶融池形成を支配するものと考えられる。 プラズマミグハイブリッド溶接の数値シミュレーションモデルを開発し、これを用いて溶融池内の熱輸送プロセスを検討した結果、主にプラズマ溶接とミグ溶接のプラズマ流が引き起こすせん断力により、溶融池には複数の大規模な渦が形成されることがわかった。特にミグ溶接にパルス電流を用いた場合、アーク間干渉の影響が小さくなることから、ミグワイヤから溶融池へともたらされる高温の溶滴はキーホール背後の渦に移行し、移流により母材裏面側へと輸送され、溶込みを大幅に増加させることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度もアーク間干渉がキーホール安定性及び溶融池形成に及ぼす影響とその原理について引き続き検討を行う。さらに、電磁コイルによる外部磁場を印加することにより、アーク間の干渉を制御する。ここでは、アーク・キーホール・溶融池の熱的・力学的相互作用に関する知見に基づき、数値解析により最適な電磁コイルの形状や配置ならびに励磁電流の波形を設計し、キーホール安定化及び溶融池形成の改善を通じて溶接品質の向上を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画立案当初は、複合溶接トーチ(特注品)を設備品として購入する予定であったが、製作に必要な物品を入手したためこれを自作することとし、その予算により精度の高い磁場制御システムを2023年度に制作することとしたため。また、2022年度は担当学生不在のため実験研究の推進が困難であった点も理由の一つであり、代わりに数値シミュレーションによる研究を実施した。2023年度は博士後期課程の学生を本テーマにつけることが可能なため実験研究を進めることができると考えている。
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