本研究では、周期的一軸圧力下通電焼結法によるチタンの低温緻密化を検討している。前年度までの研究で、周期的圧力を印加することで600 ℃以下の低温でも相対密度99 %以上の緻密な焼結体が得られることを示した。本年度は、主として周期的圧力下で600 ℃以下の温度で通電焼結したチタンの機械的特性の評価(簡易曲げ試験および小型試験片を用いた引張試験)を行い、従来の焼結温度(900 ℃)で得られた焼結体と比較・検討した。 組織および破面観察により、周期的圧力印加が粉末粒子の緻密化および粒子間結合を促進することが確認された。例えば、焼結温度600 ℃、保持時間無しの条件においては、100 MPaの一定圧力下で作製した材料は延性を示さないのに対して、周期的圧力下で作製した材料は延性を示し、曲げ破面に多数のディンプルが観察された。また、焼結温度500 ℃においては、300 MPaの周期的圧力を印加し、60 min保持することで十分な延性を示す材料が得られた。さらに、500 ℃,600 ℃という低温で焼結した材料は、焼結温度900 ℃で得られた焼結体と比較して微細な結晶粒からなっていること、高温焼結材と同等もしくはそれ以上の機械特性を示すことを確認した。 以上、周期的圧力下での通電焼結により、600 ℃以下の低温でも十分な機械的強度を有する緻密なTi焼結体の作製が可能であることが示された。
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