研究課題/領域番号 |
21K04715
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
茂野 交市 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (60707131)
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研究分担者 |
山崎 友紀 法政大学, 経済学部, 教授 (50311048)
相馬 岳 香川高等専門学校, 機械電子工学科, 教授 (60508266)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 熱電材料 / コバルト層状化合物 / 酸化剤 |
研究実績の概要 |
熱電材料は温度差を起電力に変換できるため、高性能な材料の開発が実現できればクリーンな新エネルギー源としてのポテンシャルを有する。我々は最近、セラミック系熱電材料では最高レベルの性能を持つCo層状化合物であるNaxCoO2(x=0.80)粉末(以後NCOと略す)を出発物質とし、酸化還元(Redox)法により種々の層間距離を有する化合物粉末の合成に成功した。そして、層間距離の広い化合物粉末をプレスして作製した成形体の熱電特性が出発物質を超える値であることを見出した。もし、上記粉末を緻密化できれば高性能熱電材料として有望である。しかしながら、これらの化合物は熱安定性に難がある。すなわち、通常の電気炉で緻密に焼結しようとすると層状構造が崩壊してしまう。そこで種々の方法を模索した結果、HHP(水熱ホットプレス)法に効果のあることを見出した。従って、本研究の目的を「HHP焼結を用いた熱安定性のないCo層状化合物粉末の緻密化手法の確立と高性能熱電材料の創成」とした。 今年度はまず、層間にNa以外のイオンが挿入されたCo層状化合物を用い、酸化剤による層間距離の時間変化(変遷)を追う取り組みを行った。具体的には、上記NCO粉末を出発物質とし、フラックス法によりNCOの層間に存在するNa+の代わりにSr2+をイオン交換したSCO粉末を合成した。そして、上記SCO粉末に水を加えたスラリーに酸化剤として過硫酸アンモニウムを添加・攪拌し、撹拌時間による生成物質の変遷を調べた。その結果、まずSCOよりも層間距離の広い化合物が生成し、その後、SCOよりも層間距離の狭い化合物となることがわかった。現在、合成した粉末のキャラクタリゼーションを行っている。来年度は緻密な焼結体の作成を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響により所属部署外での焼結実験が困難になっている。そのため、2021年度は焼結前のセラミック粉末合成検討を中心に研究を進めざるを得ない状況であった。2022年度早期のCOVID-19の終息による研究加速が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間内に明らかにすることは「種々の層間距離をもつCo層状化合物を合成し、その層状構造を崩壊させることなくHHP焼結により緻密化させ、熱電材料としての可能性を検証すること」である。 (A)Redox法による種々のCo層状化合物の合成手法確立とキャラクタリゼーション:出発物質であるCo層状化合物の層間物質をNa, Sr以外でも検討し、種々の層間距離を持つ新規Co層状化合物の合成に挑戦する。また、新規Co層状化合物の構造や熱安定性は明確になっているわけではないため、組成やCoの価数、熱安定性を分析する。 (B)熱安定性のないCo層状化合物粉末のHHP焼結による緻密化手法の確立:項目Aで合成した層間距離を有するCo層状化合物粉末のHHP焼結を行う。HHP焼結に適した条件や助剤の探索を系統的に行い、メカニズムを把握する。 (C)緻密化した材料の熱電特性と材料の微細組織との関連性の把握:項目Bで緻密化した材料の熱電特性測定を随時実施する。特に、異なる層間距離を持つCo層状化合物ごとの焼結前(成形体)と焼結後の熱電特性の変化を定量的に把握する。また、焼結した材料の微細構造観察や構造解析、熱分析を随時行い、熱電特性との関連性を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により他の研究プロジェクトを含めた実験の進捗に影響が生じた。そのため、研究代表者の所属機関での簡易焼結装置導入にまでは至らなかった。2022年度は、2021年度に実施できなかった簡易焼結装置導入のための費用を中心にあてる予定である。また、得られた成果を論文として発表するための費用にもあてる予定である。
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