研究課題/領域番号 |
21K04716
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
黄 新ショウ 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (80415679)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マグネシウム合金 / 圧延 / 集合組織 / 成形性 |
研究実績の概要 |
2021年度は、集合組織をランダム化したAZ(Mg-Al-Zn)系合金とAT(Mg-Al-Sn)系合金の高温圧延材およびTD-split textureを示すMg合金を対象として、初期集合組織と合金組成が冷間圧延性に与える影響を調査した。 始めに、AZ系とAT系Mg合金に対して高温圧延を行い、Mg-1.5Zn-0.2CeとMg-1.5Zn-0.1Ca合金に対して通常圧延を行い、圧延後に350℃1時間焼鈍処理を実施し、ランダム化した集合組織及びTD-split textureを有する圧延材を作製した。また、比較材として、強い底面集合組織を示す汎用Mg合金であるAZ31(Mg-3Al-1Zn)合金の通常圧延材(焼鈍材)を作製した。 次に、得られた各合金の熱間圧延材に対し、1パス当たり5%の圧下率でマルチパス冷間圧延を行い、パス間焼鈍せず、エッジ割れが発生し始める際の限界冷間圧下率を調べた。 初期集合組織がAZ31合金の冷間圧延性に及ぼす影響を調査した結果、弱い底面集合組織を持つ高温圧延材が通常圧延材に比べ、限界冷間圧下率が14%から34%に格段に向上したことを明らかにした。冷間圧延材の組織を観察すると、通常圧延材は歪み集中する粗大せん断帯が顕著に発生した。これに対し、高温圧延材は比較的に均一な変形組織を示し、この歪み集中の低減は冷間圧延性の向上に繋がったと考えられる。 AZ系やAT系Mg合金の添加元素濃度が冷間圧延性に及ぼす影響を調査した結果、AM30(Mg-3Al)合金に0.3wt%Znや0.3wt%Snを僅かに添加すると、冷間圧延性が大幅に改善することを突き止めた。一方、TD-split textureを有する圧延材は初期集合組織が圧延方向(RD)に(0001)面の方位分散が不足のため、RDに沿った圧延では、冷間圧延性の向上がAZ31合金通常圧延材に比べて限定的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AZ31合金の冷間圧延性に及ぼす初期集合組織の影響を明らかにした。また、Mg合金の主要固溶元素であるAl、ZnとSnの添加量の影響について重点的に調査し、優れた冷間圧延性を得るための適正な合金組成を突き止めた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、各合金の冷間圧延材の組織、機械的特性と張出し成形性を調査し、初期集合組織と合金組成が冷間圧延材の特性への影響を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は電気顕微鏡用消耗品、研磨用消耗品などの購入の費用を次年度に残したためである。次年度は電子顕微鏡用消耗品、研磨用消耗品などの購入に使用する予定である。
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