研究課題/領域番号 |
21K04717
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
國枝 泰博 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部マテリアル応用技術部プロセス技術グループ, 研究員 (80746206)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | クーラント / 熱伝達 / 切削加工 / 微小気泡 |
研究実績の概要 |
本研究は、クーラント・微小気泡の状態やクーラント熱伝達率の変化を明らかにし、クーラントの熱伝達率を向上させる条件を得ることおよび得られた知見を基に工具刃先冷却を促進させる方法を提案し、難削材の高速切削加工を実用化することを目的としている。本年度は、噴流の熱伝達測定装置を製作し、その装置を用いた評価方法、クーラントおよび微小気泡を添加した水の熱伝達特性を検討した。以下にその結果を示す。 ①クーラントの熱伝達率測定装置の構築 本年度は、熱伝達ブロックを製作した。断熱材に金属ブロックが埋め込まれ上面だけ断熱材から露出させた構造になっている。その上面に噴流を供給し冷却面として用いる。その金属ブロック内には、冷却面から一定間隔にシース熱電対を埋込みブロック内の1次元的な温度分布を測定できるようにした。また、下部には電気ヒータを配置した。噴流の熱伝達による熱流束は、ヒータ加熱による熱流束と平衡になる状態で計算することが望ましい。しかし、噴流の熱伝達による熱流束が高く平衡状態に必要となる加熱熱量が大きくなることから現実的ではなかった。そこで、高温に加熱した状態のブロックの冷却面を冷却し、冷却時のブロック内の温度分布の時間変化を測定し噴流の冷却状態を評価することにした。また、改良を重ねることで冷却面温度が450℃まで対応可能な熱伝達ブロックを構築した。 ②微小気泡添加クーラントの熱伝達率の解明 微小気泡の濃度を変えた微小気泡水およびクーラントの熱伝達評価を前述の熱伝達ブロックを用いて実施した。その結果、熱伝達ブロックを450℃と高温に加熱した状態で冷却すると各クーラントにおける熱伝達に違いが表れた。特に微小気泡水の熱伝達を向上させる適切な微小気泡濃度が存在することが明らかになった。また、その濃度は切削実験における工具寿命が向上する濃度と相関があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の令和3年度の計画では、①クーラントの熱伝達率測定装置の構築を完了させること、②微小気泡添加クーラントの熱伝達率の解明の一部を実施することを目標とした。その計画に対し、①に関しては、熱流束計算に課題があるものの、実験が実施可能な状態にしたことから概ね計画通りである。また、②に関しても一部の熱伝達試験を実施し、新たな知見も得ることができたことから計画通りである。以上のことから全体的な計画に対しても概ね計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
①微小気泡添加クーラントの熱伝達率の解明:濃度を変えた微小気泡を添加した各種クーラント油剤、噴流水温、噴流流量、ノズル位置などを変化させたときの熱伝達変化を測定し、微小気泡がクーラントの熱伝達が向上させるメカニズムを推察する。特に潤滑効果が高く冷却能力が低いエマルション系のクーラントに対し、微小気泡を添加することで冷却能力を向上させる効果が得られる条件を検討したい。もし、これが実現すればクーラントに必要とされる潤滑効果と冷却効果が両立することになることから産業界に対し有益な結果になると考えられる。 ②クーラントノズルの最適化:微小気泡添加クーラントの熱伝達を促進させるノズルの検討および適用方法を検討する。昨年度の実験により1 um以上の気泡(FB)が熱伝達を阻害することが分かっている。従来から使用されているクーラントノズルを用いて切削点にクーラントを供給するとFBが発生するためクーラントの熱伝達を阻害ことが考えられる。そこで、FBが発生しにくいノズルもしくは積極的にキャビテーションの泡を発生させるノズルなどノズル形状を様々変え、クーラントの熱伝達特性を向上させるノズル形状の検討を行う。ノズル形状が微小気泡添加クーラントの熱伝達特性に与える影響は、製作した熱伝達ブロックを用いて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
・次年度使用額が生じた理由:熱伝達測定装置の構築に予定したよりも費用がかからなかった理由と感染症蔓延の影響もあり参加した国際学会が国内で開催されたため旅費が少なくなった理由などにより次年度使用額が生じた。 ・使用計画:必要に応じて熱伝達ブロックの改造の実施、熱伝達測定対象の購入、加工試験用部材の用意、ノズル製作に使用する。
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