研究課題/領域番号 |
21K04721
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
早川 邦夫 静岡大学, 工学部, 教授 (80283399)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 鍛造 / 摩擦 / 摩耗 |
研究実績の概要 |
本研究では,より高精度な材料(素材および工具)の変形抵抗曲線,熱伝達係数などの境界条件を用いて,より高精度な較正曲線を作成し,摩擦係数の加工速度依存性を明らかにした. 室温・低速での実験,化学組成から温度依存,ひずみ速度依存変形抵抗や物理的特性を取得するソフトウェアを用いて,使用する素材および工具材料の高精度な材料変形抵抗を取得し,高性能サーボプレス(当研究室所有)を用いて,加工速度を変化させた実験を行い,それぞれの加工速度における摩擦係数を合理的に同定した.2液2層型環境対応型潤滑剤に対して,前-後方缶押出し型摩擦試験により,高速および低速による鋼材の鍛造実験を行い,摩擦係数を同定した.その結果,低速時における摩擦係数は,高速時におけるそれに比べて高く見積もられることが分かった.この原因としては,有限要素解析の結果から高速時には材料の温度がより高く,そのため潤滑剤の効果がより向上したことが諸要因であることが考えられた. 次に,チタン合金について前方押出し実験を行い,加工温度と摩擦係数の関係を調査した.本来であれば,速度を変化させるべきであるが,チタン合金の場合高速で加工すると焼付きが激しく工具損傷が危惧されたため,加工速度により引き起こされるであろう温度変化を考慮した.また,潤滑剤は用いず,成長させた酸化膜を潤滑剤として用いた.その結果,温度の増加にともない摩擦係数は増加した.温度の増加にともない,材料の加工硬化の様相が変化し,加工時の表面収縮がより大きくなり,その結果潤滑を担う酸化膜のはく離が激しくなることが原因であることが,有限要素解析から推定された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
冷間鍛造における摩擦係数同定についての研究については,一定の成果を得ることができた. 一方,激な潤滑状態の変化のリアルタイム検出・予測については,本研究経費で購入予定の測定器具の納入が遅れ,十分な研究時間を取ることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
摩擦係数の加工速度依存性の評価については,引き続き,精度向上のための実験および解析を実施する. 急激な潤滑状態の変化のリアルタイム検出・予測については,ピエゾ素子を埋め込んだボルトを摩擦性能試験の工具の締結に用いて,実験中に発生する加速度の過渡情報を取得する.実験では,種々の工具表面処理,潤滑剤を用いて,明らかに焼付きが発生しない場合,明らかに焼付きが発生する場合の加速度情報を明確にして,その特徴を捉える.
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