研究課題/領域番号 |
21K04723
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
西本 明生 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (70330173)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高エントロピー合金 / 表面改質 / プラズマ窒化 / ホウ化 |
研究実績の概要 |
fcc系高エントロピー合金は、温度低下とともに強度が増加するばかりでなく、延性および破壊靭性が向上するという特異な力学特性を示すが 、硬さは低く耐摩耗特性に劣るという欠点がある。本研究では、メカニカルアロイングと焼結法により作製した高エントロピー焼結合金に対して、アクティブスクリーンプラズマ窒化ならびにプラズマホウ化処理を行い、前述したfcc系高エントロピー合金の欠点を補うことを試みる。本研究を推進することにより、高エントロピー合金母材の強化とともに窒化層ならびにホウ化層による表面の更なる高硬度化や耐摩耗性改善が期待できる。また、スクリーンを用いるアクティブスクリーンプラズマ窒化法を適用することにより、硬さおよび耐食性に優れる拡張fcc相の形成も期待できる。 高エントロピー合金のプラズマ窒化では、出発材料である粉末のボールミリングにより焼結体の密度の向上、硬さの増加、耐摩耗性の向上が認められた。焼結体の窒化後の試料において、ボールミリングにより焼結体に転位が導入されることで、表面窒素濃度の向上、表面硬さの向上が認められた。2022年9月にオーストリアで開催されたIFHTSE国際会議にて成果発表し、2023年3月にはBHM誌に論文発表した。 高エントロピー合金のプラズマホウ化では、放電プラズマ焼結により作製した高エントロピー合金に対してホウ化処理を行い、断面の硬さ測定、断面のGD-OESによる元素分析および耐摩耗性の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,高エントロピー焼結合金のアクティブスクリーンプラズマ窒化では国際会議での発表および論文発表を行った。また、高エントロピー合金のプラズマホウ化については、焼結体を作製しホウ化を行い種々の評価を行った。以上のことからおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) アクティブスクリーンプラズマ窒化処理:2021,2022年度に得られた結果から、窒化の際のスクリーンを変更してアクティブスクリーン窒化処理を行う。 (2) ホウ化処理:2021,2022年度に得られた結果から、ボールミリング条件、ホウ化処理温度およ時間のパラメータを絞り込み,系統的にプラズマホウ化処理を行う。 (3) 特性評価:窒化・ホウ化処理後の試料について,外観観察,X線回折,表面粗さ測定,走査電子顕微鏡による組織観察,摩擦・摩耗試験機による摩擦・摩耗特性等により調査することにより,プラズマ窒化・ホウ化特性における緻密かつ硬質の皮膜が得られる最適な処理条件を明らかにする。 (4) 成果発表:秋に北陸地方で開催される日本金属学会秋期講演大会ならびに九州地方で開催される日本熱処理技術協会秋季講演大会にて成果発表を行う。さらに11月に横浜で開催されるIFHTSE国際熱処理表面処理会議において,成果発表を行う。論文発表として,「Surface and Coatings Technology」などの海外の英文誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度への繰越金が生じたが,順調に実験が進んだため消耗品の支出が少なくなったことによる。 2023年度の研究費の使用計画としては,2022年度の繰越金も含めて以下の使用計画としている。 物品費として金属粉末、研磨紙,埋込み用樹脂,切断砥石等の消耗品費を予定している。旅費として国内開催の学会発表および国際会議での成果発表のための交通費を予定してい る。さらに人件費・謝金として大学院生による研究補助の謝金を予定している。
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