研究課題/領域番号 |
21K04725
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
北田 良二 崇城大学, 工学部, 教授 (60540276)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レーザフォーミング / 熱可塑性炭素繊維強化プラスチック / 炭酸ガスレーザ / パルスレーザ / 熱応力 / 曲げ加工 |
研究実績の概要 |
研究初年度の取り組みとして,炭酸ガスレーザによる熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP:Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics)のフォーミング特性を実験的に評価した.試験片としては,ナイロン6(PA6)をマトリクス材とする厚み1mmのCFRTP板材(60×30mm)を使用した.片持ち梁状に固定したCFRTP板材表面に対して,5mm角のパルスレーザを1回走査して,熱応力による曲げ加工実験を実施した.レーザ走査条件として,パルスレーザのパルス幅,ピーク出力,オーバラップ率(パルス数)を制御した.板材表面温度の測定,レーザ変位計を用いた変位量の測定,曲げ加工後の曲げ角度やレーザ走査痕の観察により,レーザ走査条件の最適化を行った.その結果,パルス幅,ピーク出力,オーバラップ率(パルス数)を適切に制御して,板材表面温度をマトリクス材であるナイロン6(PA6)の融点温度225℃付近にすることで,熱的なダメージを抑制して,より大きな曲げ角度が得られることがわかった. 次に,CFRTP板材の曲げ加工としてレーザ走査法について検討した.CFRTP板材表面に対して複数回レーザ光を重ね走査して,その重ね走査をシフトしていくことで,より大きな角度での曲げ加工が可能であることがわかった. 以上の実験結果から,炭酸ガスレーザによりCFRTP板材のレーザフォーミングが可能であり,レーザ走査条件により曲げ加工を制御できることを実験的に明らかにすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究初年度としては,ナイロン6(PA6)をマトリクス材とするCFRTP板材に対して炭酸ガスレーザを走査することで熱応力による曲げ加工が可能であることを実験的に確認した.しかしながら,パルスレーザの出力調整に時間を要したため全体的に研究に遅延が生じている. 当初計画では,研究初年度において,レーザパルスを計測してパルス波形とフォーミング特性の相関関係を考察する予定であったが,パルス計測法の検討のみであり,現在,実験準備中である.また,ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の他のマトリクス材のCFRTP板材についてもフォーミング特性を確認して,マトリクス材がフォーミング特性に及ぼす影響について確認する計画であったが未着手である.更には,レーザフォーミング前後のCFRTP板材に対して,引張圧縮試験や曲げ試験を実施して,レーザ走査が材料の機械的特性に及ぼす影響を考察することも今後の課題となっている. 以上の進捗状況により,“遅れている”と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度(研究計画2年目)において,現在準備中であるレーザパルス計測実験を早期に立ち上げていく.計測に必要なセンサー等を導入して,パルス波形を実測していく.パルス波形とフォーミング特性の相関関係を考察することで,レーザフォーミングに適したレーザパルス波形と走査条件を実験的に解明していく.また,熱伝導解析と応力解析に取り組み,レーザフォーミングのメカニズムについて理論的に考察を深めていく.実験結果と解析結果を比較考察することで,レーザ走査条件に対するフォーミング形状の予測を目指していく. 研究最終年度(研究計画3年目)においては,板材の曲げ加工のみでなく,複雑形状のフォーミングについて検討していく.応用的なレーザフォーミングを試みることで,今後の実用展開について調査していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度に未着手となっているレーザパルス計測実験に関するセンサー類等を次年度(研究計画2年目)に導入して実験着手する計画である.また,実験および評価において必要となるCFRTP板材,消耗品や備品類は継続的に購入していく. 次年度に計画されている熱伝導解析と応力解析に新たに着手して,解析に要する諸費用についても使用していく.
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備考 |
北田良二:産学連携推進事業「熊本テックプランター2021」へのエントリー(2021.5),北田良二:産学連携推進事業「2021年度テックプランター ディープテックグランプリ」へのエントリー(2021.8),北田良二:産学連携推進事業「熊本テックプランター ミートアップ」での研究紹介(2021.8)
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