研究課題/領域番号 |
21K04726
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
万谷 義和 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 教授 (40367256)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | チタン合金 / 高減衰能 / 合金組織設計 / 高強度化 / マルテンサイト |
研究実績の概要 |
2023年度は、主としてTi-18Nb-xAl合金(x=0,1,4,7mass%)の焼入れ準安定マルテンサイト組織とその材料特性の実験結果から、それらの相関関係に関する検討を進めて行く中で、以下の知見が得られている。 ・Al添加量の増加に伴い、硬さと引張強さは増加した。これはAl添加による金属組織の微細化と固溶強化の複合的な影響によるものと考えられる。特に、7Alの焼入れ材では2段階の降伏を示して1000MPaに近い引張強さを示したが、これは焼入れα”構造の単位体積の収縮による強化も加算されたために生じたことを示唆した。 ・ヤング率は0Alから1Alはわずかな増加であったが、4Alでは大幅に増加し、7Alでは減少を示した。内部摩擦は0Alが最も高く、4Alまで減少したが、7Alでは1Alよりも高い値を示した。これらの変化は、β単相域からの焼入れによるα”構造の膨張あるいは収縮による体積変化と格子欠陥の導入、集合組織の影響が生じていることを示唆した。 ・DSC加熱曲線に表れる発熱ピークについて、0Alと1AlはTsからTfまでの温度幅はほとんど同じで、全体的に高温側にシフトしていた。4AlではTpが減少し、TsからTfまでの温度幅も広がった。7AlではTsからTfまでの温度幅はさらに広がった。相変態熱は0Alから1Alは減少したが、その後は4Al、7Alと増加傾向にあった。また、400K以下の低温側では、0Alと1Alで基線の揺らぎがあったのに対して、4Alと7Alは比較的安定していた。これらの変化は、焼入れα”相の構造安定性と相関があることを示唆した。 また、Ti-(15,20)Nb-xAl合金(x=0,1,4,7mass%)を作製し、同様な手法で実験結果を積み重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ti-(15,18,20)mass%Nb合金における焼入れ準安定マルテンサイト組織の材料特性を調べていく中で、軽量・高強度・高減衰能を実現するチタン合金として、まず焼入れα”マルテンサイト組織の形成により高い減衰能を示すTi-18Nb合金をベースに、Alを添加して評価を進める方針を立てた。Ti-18Nb-xAl合金(x=0,1,4,7mass%)の焼入れ準安定マルテンサイト組織とその材料特性の実験結果から、Al添加の効果とその添加量について一定の方針を見出す事が出来ている。また、Ti-(15,20)Nb-xAl合金(x=0,1,4,7mass%)も作製し、同様な実験方法で実験結果を積み重ねている。
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今後の研究の推進方策 |
Ti-18Nb-xAl合金(x=0,1,4,7mass%)の焼入れ準安定マルテンサイト組織とその材料特性の実験結果から、Al添加の効果とその添加量について一定の方針を見出す事が出来ている。それに加えてTi-(15,20)Nb-xAl合金(x=0,1,4,7mass%)を作製し、同様な手法により実験結果を積み重ねているところである。今後の研究の推進方策として、得られている結果を系統的にまとめていく中で不足しているデータや再検討が必要なデータを精査して取得し、軽量・高強度・高減衰能を実現するチタン合金の革新的な組織設計指針の確立を推し進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一通りの実験を行なって、組織設計指針の方向性は掴めたが、再実験を含めた検証と考察および成果発表が必要となった。2024年度はそれに必要な物品費、旅費、研究補助謝金、投稿論文費として使用させていただく計画を立てている。
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