研究課題/領域番号 |
21K04729
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研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
東 雄一 鹿児島工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70709336)
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研究分担者 |
徳永 仁夫 鹿児島工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (70435460)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | bcc型Mg合金 / LZ91 / 衝撃液圧成形法 / 絞り性 |
研究実績の概要 |
Bcc型Mg合金:LZ91を供試材に使用し,衝撃液圧成形法による高ひずみ速度域におけるLZ91の加工性を解明することを目的とし,今年度は基礎データを取得することを主として研究を行った. まず,引張試験によりLZ91の機械的特性の調査を行った.衝撃液圧成形法で対象となる絞り加工に影響を及ぼす面内異方性の強さや伸び,異方性の特性:r値等の基礎データを取得した.LZ91はMg-Lichのα相とLi-Lichのβ相の2相が層状に圧延方向に伸びた組織の形態をしている.この特徴的な組織の形態に依存して,面内異方性の角度に対する伸びは圧延方向を0°としたときの45°方向に大きな伸びを示し,r値も45°に最も大きな値を示した. 絞り性を評価する標準試験法のエリクセン試験を実施し,低ひずみ速度域での絞り性を評価した.エリクセン試験では,試験片のサイズを衝撃液圧成形法の絞り比2.0にあわせて準備し,エリクセン値は8.29mmを示した. 衝撃液圧成形法では衝撃弾の打ち出し圧力が加工のパラメータとなっており,打ち出し圧力が大きくなるほど絞り深さは深くなり,160kPaの打ち出し圧力まで加工が可能であり,それより大きな圧力では底部で破断が生じた.破断の仕方も0°方向に亀裂が進展し,組織の形態に依存した破断形態を示した.加工が可能であった条件において,絞り深さの最大値は約7.4mmであった. エリクセン試験と衝撃液圧成形法では試験片のサイズが異なるため(両試験とも絞り比を2.0とし,試験片のサイズはエリクセン試験が直径54mm,衝撃液圧成形法が直径30mmとした),本研究では,お互いの絞り性を評価するため(エリクセン値または絞り深さ)/試験片直径という指標を用いて比較した.その結果,エリクセン試験が0.15,衝撃液圧成形法が0.24という結果が得られ,衝撃液圧成形法の方が良好な絞り性を示すことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,2021年度~2022年度にかけて衝撃液圧成形法における加工後の板厚変化や硬度変化を評価する予定であった.しかし,本研究を始めるにあたって,LZ91に関する文献等が少なく,一般的な引張試験から得られる機械的特性や標準試験法による絞り性の評価について不明な点が多かったため,2021年度はLZ91の機械的特性や標準試験法による絞り性の評価を実施し,基礎的データを収集することを主として研究を行った.また,衝撃液圧成形法を応用した高ひずみ速度域での絞り性の評価についても実験を進め,加工パラメータに対する加工の限界値も見出すことができた. 以上の事から,当初の計画では予定していなかったことについて実験を多く行ってきたが,今後研究を進めていくにあたって必要なデータを収集することができたと考えている.これより,本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では,2022年度から微細組織観察や構造解析を実施し,組織学的な観点から高ひずみ速度域での変形メカニズムを解析する予定であった.一方で,2021年度に収集した基礎的データを有効に活用するために,面内異方性の各方向に対する伸びや異方性のr値と衝撃液圧成形法により加工したサンプルの形状をつきあわせて,基礎的データが高ひずみ速度域での加工にどの程度影響しているのか,といったところもより詳しく評価する必要があると考えている. また,エリクセン試験より衝撃液圧成形法の方が絞り性が良好である,といった結果が得られたことに対する考察も必要である.その一つに加工時の温度が挙げられるため,加工時の温度測定も2022年度に実施する予定である.加工後の板厚変化や硬度変化の評価も進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
比較的高額な設備を導入したため,予算に対してわずかに残額が生じた.材料などの消耗品を購入するには足りずにそのまま残額として残した.翌年度分として請求した助成金とあわせて,必要な消耗品の経費に充てる.
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